第326話
解放戦争後、フリアに地獄をもたらした狂王の再来を防ごうと、人々はその血を絶やす事に躍起となった。
総大司教命として教会主導のもと『狩り』が各地で徹底して行われ、戦地から脱した狂王の親族から使用人達までも逃がしまいと、証拠はなくともその疑いだけで次々と東黄人達が拷問、火刑に処され、まさに大量虐殺がフリア東部を中心に至る所で発生したのである。
誰もその凶行に声を大きくして反対する事は出来ない。いや、したところで止まるはずもなかった。
この『狩り』はフリアの地を浄化し、安寧をもたらす為に教会が出した聖命なのだから……。
狩りの対象は当然のように赤子にも及び、罪も無き母子が告発という死刑宣告を受け、炎に焼かれ死んでいった。
正義の名のもとに、業火は多くの東黄人の命を灰へと変えてしまったのである。
そのような狂気なる正義の執行の手が、ロレンシアの女王が生んだ赤子に及ばなかったのは、彼がまさしく女王の息子であり王族であったからに他ならない。
当時の教会も一国家の王族には証拠もなしには強く出られなかったのだ。
こうして難を逃れたかに見えた女王の子であったが、さらなる過酷な運命が彼を待ち受ける事になる。
それは通称『風月の黒蠅事件』とも呼ばれ、後にロレンシア中を揺るがす事に繋がる一つの強盗事件より始まる。
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