第264話
「いいや、まさか。ありえぬ。いくらなんでもそんな事……」
「不自然なのは門が開いた事だけではない、この街が狙われたのは何故だ」
明らかに動揺するガァガに畳み掛けるようにしてレグスが言った。
「いくつもある門街の中から選び攻め込んだ街に、王を始めとして普段は王宮にいるはずの者達がいた、……これも偶然か?」
王や多くの元老院議員達がこの街を訪れていたのは、急遽決まった決闘裁判を見届ける為である。
そしてその決闘裁判の当日に、敵はこの街に攻め込んできた。
出来すぎている。何と敵側に都合の良い事か。
大門が勝手に開いた事と併せ考えてみれば、情報が漏れている事は自明ではないか。
「下手な自尊心は、破滅をもたらすだけだぞ」
レグスの警告にガァガは観念する。
認めざるを得ない、敵の息のかかった者が上層部に紛れ込んでいる事を。
「だが、どうするというのだ。お前の言う通りだとして、どうやって潜り込んだ間者を見分ける。どこに何匹紛れたか、まったく検討もつかぬのだぞ」
今日この日、この土壇場を迎えるまで、結局誰もベベブの異変を見破れなかった。
ならば彼以外にも、敵の間者がなりすましている者がいてもおかしくはない。
今のベベブと懇意な者、あるいはまったく無関係に近い人間。
一度疑い出せば、誰もが怪しく見えてくる。
区別をつけるなどガァガには不可能に思えた。
「まさかこの非常時に一人一人調べていくつもりか?」
敵の間者も程度の低い術で化けているわけではあるまい。見破るには相応の手間がかかる事だろう。
今この城には数百では利かない数の人間が籠城している。それを一人一人調べるとなれば、どう考えても時間が足りない。
「そうだ、そうするしかない」
「しかし……」
苦渋の表情を浮かべるガァガと深刻な顔をするレグス。
そんな二人の近くで突如声がする。
「簡単よ、私に考えがあるわ」
二人が声する方へと視線を落として見れば、そこには得意気な顔を浮かべる精霊の姿があった。
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