第260話
レグスは警戒しながらもその招きに応じ、ガァガのもとへと向かった。
彼としてもこの緊急事態、壁の民の有力者である大男に聞いておきたい事があったのだ。
無論、ファバ達は心配していたが、今はどのみち他に選択肢はない。
城の外は魔物だらけであり、城内に留まるならば壁の民と敵対するわけにはいかないのだ。
相手の話が何であるにせよ、一度耳を貸す必要があった。
「戦いで浴びる敵の血は名誉の証と言うが、お前ほどの名誉を持つ男もそうはいないだろう」
階段を上り、自身のもとへとやって来たレグスを見たガァガの第一声は男の激闘を称賛するものだった。
魔物の血に塗れた戦士の姿。どれほどの敵を斬り殺したか、想像もつかぬ。
「世辞を言いたくて、わざわざ私を呼んだわけではあるまい」
レグスの口調には棘がある。
無理もない。
彼ら壁の民がレグスにした事を思えば当然の態度だった。
「ああ、そうだな」
少し言い淀むガァガ、しかし覚悟を決めたのかあらたまって彼は言う。
「すまなかった。まずは決闘での我らの非礼を謝りたい」
それは謝罪の言葉だった。
自尊心の強い壁の民から謝罪の言葉を引き出すのはそう簡単な事ではない。
それほどにガァガは恥じていたのだ、あの決闘での出来事を。
「それと……」
そして謝罪の言葉に続き、レグスの懸念について彼は弁明を始める。
「一部にお前の事を良く思わぬ者がいる事も確かだ。だが、これだけは信じてくれ。私はお前の味方だ」
「悪いが必要としているのは言葉ではない、確かな身の安全の保障だ」
「安心してくれ。正式な決闘に勝利した勇士に手など出させるものか」
「その言葉が偽りでない事を願おう」
「勿論だ。約束する」
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