第219話
疲労の色濃き対戦者に彼は言う。
「女神ティアタムにその慈悲を乞う言葉を、精々今のうちに考えておけ。愚かなお前の罪も、寛大な彼女ならば御宥恕なさられるやもしれんぞ」
劣勢明らかな中で浴びせられた大男の言葉にも、レグスは悪びれる事なく言い返す。
「安心しろ。神々に赦されるほど、安い業は背負っていない」
「減らず口を……。いいだろう。ではその汚れた魂ごと地獄の業火にて焼かれるといい!!」
猛然と斬りかかるブノーブ。
彼が何度も、何度も大剣を振りぬく度、レグスは必死にそれを受け、流し、かわし続けた。
反撃の隙はない。
防戦一方。
このままでは、いずれ決着がつくだろう。
ブノーブの勝利という決着が。
しかし、それにしてもよく耐える。
疲労と劣勢明らか、攻勢に移る機会などまるで見えない中でレグスは耐え続けた。
耐えて、耐えて、よく耐えた。
そのレグスの堅き守りを称揚する気持ちと同時に、怒りを覚えながらブノーブが叫ぶ。
「これだけの技と力を持ちながら、最初のくだらぬ小細工は何だ!! 気に入らん!! お前の持つ、その腐った性根が気に食わんのだ!!」
止めの一撃。そう思い放ったブノーブの渾身の一撃。
けたたましく鳴り響く剣音。
レグスの頭上向けて振り下ろされた大剣が宙を舞った。
「くだらぬ小細工などではない」
黒き剣にて大剣を打ち上げた男は言う。
「あれは、私が勝利するに必要な布石だ」
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