第171話
決闘裁判は名が示すとおり、決闘という手段を用い、その勝敗によって罪の有無を決める裁判である。
そこには証言や証拠品などの人智が及ぶ事はない。全ては決闘の勝敗という天意に委ねられることになる。
「愚かな。呆れて言う事もないわ。決闘裁判だと? 神々の名を無闇に語り、利用する厚顔無恥なお前達らしい要求だ。……だがな、奴が逃げ隠れしていたのを見た者が何人もおるのだ。天意を仰がずとも、奴の罪は明々白々」
「それは彼がただの壁の民であったならばの話だ。あの者は言っている、自分がすべき事はここで魔物と戦い続ける事ではないと。真の星読みであるならば、この地で戦わぬ事が罪にはならぬ」
「いい加減にしろ。奴はイカれた嘘付きにすぎぬ」
「それは公正と断罪の神、ロバール神がお決めになる事だ」
「いいや、違う。ここは壁の地だ。傲慢な西の民よ、覚えておくがいい。神々の名を唱えようと、お前達の地の理などここでは通じぬ。あの男の罪はこの地の法によって裁かれるのだ。これ以上邪魔立てするようなら、お前も我が地の法で裁く事になるぞ」
執行人がそうレグスに告げた時、巨大な獅子馬に跨った一団がこの場に駆けつける。
「いったい何の騒ぎだ」
騎乗したまま尋ねる皺顔の男に執行人は少し畏まりながら言う。
「勇者ガァガ……。それが、この男が……」
これまでの経緯を説明する執行人。
彼の話を聞き終えるとガァガはレグスに尋ねる。
「どこの開拓団の者だ」
「ローガ開拓団」
「ローガ開拓団……」
名に聞き覚えがないらしく反応が鈍い。
その様子を見て、傍らで同じく獅子馬に跨る一人が羊皮紙で出来た巻物を広げながら言う。
「ミドルフリア、ベルフェン王国を追放された男、ロブエル・ローガが率いる開拓団」
「追放者の開拓団……」
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