第168話
「俺が死ねば、お前達も終わりだ。俺は『星々の王』を支える手足となるべき男なんだ。こんな辺境の地で魔物と戦わせ続けるなど馬鹿げてる!! 何故それがわからない!! 王には俺が必要なのだ!!」
誇り高き戦いの民に生まれながら、その戦いを馬鹿げたものだと断言する罪人。
彼は同胞達だけでなく、この場に集まった開拓団の男達にも訴える。
「おい、西の民よ。俺を助けろ。俺をここで助ければ、灰色の地について知っている事を教えてやる。俺はあの地で十年生きた。山のオークの事も、洞穴のゴブリンの事も、草原のドナト族の事も知っている。森の抜け道も、トゥルカスの遺跡の在り処も知っているぞ!!」
灰の地の情報を欲する開拓団に助けを求める罪人だったが、今ようやく壁が越えられるとなった直前でわざわざ壁の民達と問題を起こそうという気になる者はいないらしく、彼らに動きはない。
「ちくしょう。どいつもこいつも愚かなわからずや共め。俺はお前達の王を導く者だぞ!! 星読みのマルフスはこんなところで死ぬ運命じゃないんだ!!」
罪人の言葉を翻訳し続けるセセリナにレグスが尋ねる。
「星読みか、そんな事が出来る者が本当にいると思うか?」
「星の声を聞けるのは特別な者だけよ。自称星読みの者をたくさん見てきたけど、本物だったのは五百年以上昔に会った一人だけ。他は皆、詐欺師か、誇大妄想にとりつかれた病人だったわ」
千年の時を越えてこの大陸を流浪し続けた精霊とて、真の星読みに出会ったのは一度だけだと言う。
「あの男はどうだ」
「少なくとも詐欺師ではなさそうね」
精霊の少女が言わんとしているのは、罪人の男がその場しのぎの嘘は言っていないだろうという事だ。
病人か、本物の星読みか。
それを今ここで確かめる術はない。
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