第160話
それから四年の歳月が過ぎた。
トーザ達が冬も越せぬと笑い、野に捨てた一人の少女。
ムーソンの娘カムは生きていた。
ブルヴァと呼ばれる草原地で、彼女は一族ただ一人の生き残りとして、過酷な世界で生き続けていたのだ。
彼女が生きる目的はただ一つ、復讐だった。
あの惨劇を生き残った鷹と途中加わった草原の馬と共に、少女はひたすらに復讐を果たす力と機会を求め、武を高め、智をめぐらした。
十五の時、彼女は自身に復讐を果たすだけの力がついた事を実感する。
時は来た、一族を滅ぼした卑劣な者達に復讐するその時が。
皆殺さねばならない。
あの夜にいた男達を皆、自分の手で殺さねばならない。
最初の標的はトーザだった。
父をその手に掛けた男、一族を破滅へと追い遣った首謀者、必ず殺しておかねばならない男。
トーザはこの四年でジバ族の大族長の地位を得るまでになっていたが、だからこそ、最初に殺しておかねばならないのだ。
彼女の復讐が始まれば身辺の警護はより強力になり、復讐は困難なものへとなっていくだろう。
ならば警戒の薄い最初の一人は、これから先、万が一復讐の道半ばで倒れる事になっても、殺しておきたい相手。
トーザ以外にあろうはずもない。
この男は必ず殺す、そしてそれをなす力が今の自分にはあるとカムは確信していた。
大族長と言っても草原の外の国の王様のように、城や宮殿の中で暮らしているわけではない。
トーザを殺すのに高い城壁を越える必要など存在せぬのだ。
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