第145話
天秤月が終わりに近付き、春の訪れの予感を風が知らし始めた頃、ローガ開拓団の面々はミドルフリアも遠く、東の辺境に差し掛かかっていた。
こんな田舎まで来てしまえばもう人も情報も集まるまい。あとは壁へと向かうだけだと誰もがそう思っていた。
そんな時、街道を行く彼らの馬車の行く手にいくつもの人影が立ち塞がる。
それは衣服も顔立ちも薄汚く下品な男達。見るからに野盗の類いである。
「ちっ街道荒らしか」
先頭を馬で行くガドーがそう言って背後へと視線をやる。
「どうします、ボス」
彼は幌の付いた荷馬車の御者台に腰掛けるシドに指示を仰いだ。
「警告だけはしておいてやれ」
「はいよ。……おい、あんたら!! 俺達がグレイランドを目指す開拓団と知ってなお、つまんねぇ狼藉を働こうってわけじゃねぇだろうな」
ガドーが大声で呼びかけると一団の頭領らしき男が笑いながら言った。
「そうか!! 噂の開拓団の連中か!! こりゃあついてるぜ!! たった一台の馬車、お前ら本隊からはぐれたな!! これから先の大冒険に備えてたっぷりと積荷は積んであるんだろう!! 大人しく馬と積荷は置いていきな!! そうすりゃ命だけは助けてやる!!」
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