第119話

 見守っていた者達の中で、ガドーやディオンなどはあからさまに安堵した表情を見せるが、レグスはというとすぐにファバの正気を確かめる作業を行っていた。

 少年の瞳に陰りはないか、いくつかの質問と共に、女に妙な術にかけられていないかを確認する。

 そして異常がない事をレグスが確認し終えると、次は彼自身がミルカの試しを受ける番となった。

 彼が悪意ある術に落ちるような事になれば、ファバではどうにもならない。精霊のセセリナが指輪に隠れているといっても、ボウル村でかなりの霊力を消費してしまった彼女の力が、今、この場でどの程度通用するかは未知数で安心出来ない。

 シド達としてもレグスが妙な気を起こせばミルカの身が危なくなる。

 試しを見守る周囲の緊張感もファバの時よりも高まっていた。

「では、いきます……」

「ああ」

 ミルカの瞳の色が再び変わり、レグスもファバと同じように全身に視線を浴びるような妙な感覚に襲われた。

 だがこれも奇妙ではあるが、不快さはない。悪しき術独特のまがまがしさなど全く感じられなかったのだ。

 それでもレグスは油断しない。ミルカの首筋の傍に置かれた剣はいつでも動かせるようにしていた。

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