第110話

「……あの不吉な感じが霊力によるものだと言うのなら、早急に動く必要もないだろう。都合の良い開拓団が他に見つかるとは限らんからな」

 グレイランドに向かう開拓団と言ってもその規模は様々。開拓団の参加条件に実績の証明を求めるところもあれば、厳しい試験を課すところもある。国籍や宗教、人種に制限をかけるところもあるし、中には既にメンバーは決まっていて最初から外に募集などかけないような開拓団も存在している。

 レグス達の目的はあくまで『壁』を越える事、壁さえ越えれば開拓団は用済みとなる。必要以上に警戒し、壁を越える手段を失っては本末転倒というものだろう。

「ほんとに大丈夫かよ……」

「一応の警戒はしておけ。魔術師の類いに目を付けられてるとやっかいだ、なるべく単独行動は避けろ」

 腕のいい魔術師が精神的干渉を使い、隠し事を探ってくるというのは考えられる事態。その手の術に全く免疫のないファバが狙われれば彼らの嘘は見破られてしまうだろう。

 無論、そんな術を他人にかけようなど剣を目の前で抜くに等しい事、レグスがそばにいればファバに対して安易に何か仕掛けるような真似は出来まい。

「まさかトイレまで一緒にするつもりじゃねぇだろうな」

「ほう、そこまですれば完璧だな」

「勘弁してくれ……」

 冗談交じりのやりとりを済ませた後、レグス達はローガ開拓団について何か新たな情報は得られまいか、街で情報収集を行う。が、結果は空振り。


 そうして彼らが開拓団の建物へと再び戻ってきたのは、日が沈んだ後の事だった。

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