第66話『オーク』
魔術師ボルマンが探すフェスタ・アウラはカラロス山より北、馬も使えぬほどの険しい道をいかねばならず、日にちにして二週間はかかる場所にあった。
そこはザネイラどころかパネピア国の外、人の手など及ばぬ無人の地。しかも魔物達が蔓延っているだろうと魔術師は言う。
当然道中に危険も付きまとう事になる。
ボルマンも一人では目的を達するのは困難であると思ったからこそ、素性もよく知らないレグスに協力を依頼したのだ。蛇のメダルが意味する力に期待して。
彼らがボウル村を出発して最初の一週間は順調だった。セイラの実の効果もあったのだろうか、魔物に襲われる事もなくこれといった危険はなかった。
しかし、所詮それは人の国の内にある間だけの事。
村を出て八日目、パネピア国外へ出たレグス一行は、さっそく野蛮な魔物達に遭遇する。
醜悪な豚面に、肥満体を晒す、亜人の魔物、オークである。
「へぇ、あれがオークか」
遠目に映る魔物の姿に関心を示すファバ。
「なんだ小僧、お前さんオークを見るのは初めてか」
ボルマンの問いに彼は素直に頷き、言う。
「ああ、話には聞いてたし、オークに襲われたって村も見た事あるけど、生オークは初めてだ」
オークはフリアの地ではもっとも有名な魔物の一種だろう。
もとからこの地で活動する魔物の種類は多くない、人が接する機会がある魔物となれば尚更だ。
ザネイラの辺境で生きてきたファバにとってオークは名だけでも知ってる数少ない魔物。
「どうするんだレグス」
オーク達は狭い崖道を塞ぐようにたむろしている。避けて行こうにもかなり来た道を戻る必要があった。
「言語を理解する知能はあるが、所詮は皇帝ボロスの眷属。傲慢なエルフや頑固なドワーフ達よりも話の通じない相手だ。強行突破するしかなかろう」
レグスの答えを聞くまでもなくボルマンがそう言い切る。
「私が殺ろう。ファバ、パピーを貸せ」
オークの数はわずか四体。このぐらいの数ならばレグス一人で処理しきれる。
ファバを下手に戦闘に加えても足を引っ張るだけであり、魔術師が使う魔法には回数に限りがある、このような場面でボルマンの魔力を無駄に消費するわけにはいかない。
レグスはファバから矢を込めたパピーを受け取ると、オークの前に飛び出した。
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