第27話

 ダーナンの我慢が限界を超える。もとから忍耐強い男ではない、もはや彼の人としての理性は消え去り、怒りのままに暴走する獣と化した。

 大男は無言で大斧を振り上げると、そのまま躊躇なく敵である東黄人を攻撃する。

 その破壊力は人の放つ一撃とは思えぬほど大きく、見事攻撃を回避した男の跡には深々と斧の刃が付き刺さり、地割れをも引き起こしていた。

 男が素早く距離を詰めダーナンに斬りかかる。が、異常にまで巨大なダーナン、その急所をこのままでは狙えない。

 だから彼は、大男の前で飛んだ。高く、高く、大男の背丈をこえるほどに飛んだ。

 そしてダーナンの頭部に己の剣を叩き付けようとした。

「猿がぁ!!」

 大きな左腕に装着された篭手でダーナンはそれを受ける、まるで目の前を飛ぶ蝿でも振り払うかのように軽々と。

――さすがの馬鹿力だ。

 大男の後方に弾き飛ぶ男であったが、体勢を上手くたてなおし綺麗に着地する。

 そこへ。

「うぉらああああああ!!」

 ダーナンが大斧を軽々持ち上げ追撃を行う。

 水平に回転しそうなほど勢いつけた大斧の刃が男に襲い掛かる。

「ぎゃあああ!!」

 大斧の破壊力にあっけなく半身が吹き飛ぶ、部下である盗賊達の。

「ボス、落ち着いて下さい!! 俺達まで巻き添え食っちゃいますよ!!」

 手下の悲鳴ももうダーナンには届かない。

 彼の世界に存在するのは、敵である東黄人の男、ただ一人。

 手下の事など頭になく彼は大斧を振り回し続けた。

「ぎゃっ!!」

「助けて!!」

 逃げ出す部下も関係なく、暴走する獣は止まらない。

「猿の方が少しは利口だな」

 手下すらも血肉に変えるダーナンの戦い方に男は呆れた。

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