『東京メトロ 大手町駅  午前0時28分』

疲れ果てた鉄の塊+α

終電車が 大儀そうに

目の前から動き出した


 僕ら

 また勇気がなくって

 あのドアに

 駆け込めなかったね


君は 応えてくれないし

仕方がないから僕は独り

レールに耳をつけてみる


鈍重な車輪の響きと

早すぎる僕らの鼓動

ひやりと錆びた臭い




赤いテール・ライトが

  まっすぐ

   いや

  少しだけ

 弧を描きながら

彗星のように遠ざかる




 太陽はきっといつだって

 寂しさを抱いてるんだな

 そんなこと考えちゃうよ




冷房が切られた静穏

やがて訪れる暗闇に

常夜灯は輝きを増し


天井は銀河になって


 ねえ!

 そこを駆け上がって

 ひと周りしてくれば

 僕が投げ縄だねえ!


 僕は絶対君のために

 ソウタイセイリロン

 ナントカさえ超えて

 帰ってきてみせるよ


せっかく 柄にもなく

はりきってみせたのに


 こんなぶあついトンネル

 ひるは

 だれにもあえやしないし

 よるは

 ほしのこえもきこえない


そうゼイタク言ったのは

君じゃあなかったっけ?




君が拗ねたように

 チュウ

と鼻を鳴らしたので


僕もふて腐れたフリ

 チュウ

とそっぽを向いた

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