第10話指しゃぶり

ぼくの名前は星野天使。

その名の通り本物の天使です。それ以外の何者でもありません。


「ニャー」

猫ちゃんの声で目を覚ましたぼくは、寝ぼけまなこで彼女(猫ちゃんはメス)に挨拶をしますが、再び眠気が襲ってきましたので瞼を閉じようとしますと、猫ちゃんの肉球がぼくの右の掌をぺしぺしと叩きました。

なんだろうと思ってみてみますと、ぼくは自分の親指を口にくわえていたのです。

「ニー」

「そうですよね、分かりますよ」

意味はちっともわかりませんが、彼女が「ニー」と鳴いたのは事実です。

ぼくは眠っている時などについ親指をしゃぶってしまいます。

恐らく赤ちゃんだった頃の癖が抜けないのでしょうが、もしも指しゃぶりを目黒さんに見られたら最後、会うたびにからかわれるに違いないでしょう。

けれど、天使も完璧な存在ではないので、欠点のひとつぐらいあってもいいんじゃないかと思っているところもあります。

「欠点を長所に変える……いい言葉ですね」

そんなことを考えながら、この日の朝はしばらく指しゃぶりを続けました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る