第11話空腹を耐えしのぐ

ぼくの名前は星野天使。

その名の通り本物の天使です。それ以外の何者でもありません。


「ニャー、ニャー」

猫ちゃんが空腹を訴えています。

ですが、彼女にあげるキャットフードが残り2粒しかありません。

これでは彼女のお腹は満たされないでしょう。

だからと言ってペットフードショップに行こうにもお金がないので買いに行くことができません。天使は天国から人間の感謝の度合いによってお給料が支払われます。ぼくの場合、手助けするつもりが逆の結果になってしまうため、あまり感謝はされません。そのため、いつも財布はすっからかんの状態です。

ぼくの兄は「お前は金など必要ないだろう」と言っていますが、そんなことはありません。マンションの1か月の部屋代5万円に食費に水道、電気代にガス代、そして漫画代などを合わせると結構な額を稼がないといけません。ですが、あまり感謝されていないので生活は困難を極めます。

「こうなれば、奥の手です」

ぼくは猫ちゃんがお腹いっぱい食べられる方法を思いつきました。

彼女を天使の力で三十センチほど縮小させたのです。

そうすることで小さなキャットフードも大きなものに早変わりするため、彼女は大満足しました。そしてぼくは、彼女が残してくれた残り1粒のキャットフードを口に放り込みました。

堅かったですが、何も食べないよりは遥かにマシです。

「少しはぼくも兄さんから生きる知恵を学ばないといけませんね……」

この日ぼくは久しぶりに兄に電話をかけ、サバイバルの極意を学びました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る