第8話三十六計逃げるが勝ち

ぼくの名前は星野天使。

その名の通り本物の天使です。それ以外の何者でもありません。

天使の仕事は人を助けることです。


ぼくは今、ピンチに陥っています。

ぐるりとぼくを囲んでいるのは、6人の不良少年。

「おい、天使野郎。よくも俺にぶつかってきやがったな。痛い目に合わせてやるっ」

リーダー格と思しきリーゼントの少年がポキポキと腕を鳴らします。

相手はやる気満々ですが、ぼくの方は喧嘩をする気はこれっぽっちもありません。

そもそも相手の方がぼくにぶつかってきたのですが、彼らはそんなことを言ったところで聞く耳を持つ相手ではないことは明白です。

しかし、猫ちゃんを人質に取られているため、逃げ出すこともできません。

仕方がないので、彼らに口を開きました。

「やめた方がいいですよ」

ぼくの言動にリーダー格はカチンと来たのか、いきなり拳を見舞います。

ですが、ぼくは残像だけを残し猫ちゃんを人質にとっている不良の2人組の背後に回ると、彼らから猫ちゃんを取り戻し、足早にその場を離れます。

すると背後からリーダー格が呼び止めました。

「てめぇ逃げるのか!?」

「逃げるが勝ちですよ」

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