みのむしが翅を癒すまで

蒼色メチル基

0 みのむしになった経緯

プロローグ

 サラリーマンをはじめて十年が経った。掛け時計を見る。午後ちょうどまわった。今、俺は、ベッドの上にいる。

 半年前に友人のすすめで病院に行くと、会社をしばらく休んだ方がいいと言われた。

 俺は、うつ病らしい。

 医者から診断名を聞いた瞬間、酷く冷静に「は?」と思ったし、それと同時に少しだけ安心した自分もいた。

 なぜこうなってしまったのかは、自分でははっきり分からない。原因が分からないのにうつ病だなんて……そう感じたが、案外こういうケースは少なくないらしい。医者が想像するに「勤務先でのストレスが蓄積され、爆発してしまった」と。

 俺は大人しく言われるがまま、休養を取ることにした。

 するとどうだろう。今まで当たり前だった生活が、一切手につかなくなってしまった。掃除もせず、いつの間にか服も床に山のように積まれている。食事は実家から送られてくる即席麺やインスタント。料理が趣味であったが、それをする気力が湧かない。

 表現しようとすると、それは魔女の魔法にかけられたような。そんな感じである。

 それから半日以上ベッドの上で過ごしている。たまにパソコンをやって、ひたすらベッドの上でごろごろ転がっている。まるで、みのむしのような生活だ。あったかい布団に包まって、今日も天井を見つめる。白い。相変わらず、白いなぁ。

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