第19話 青年、情報を集める

俺が隠し部屋に入ると、すでに魔王様と族長の話が始まっていた。

俺はその会話を聞き、自分自身でそのことについて考えていた。


「……なるほどな。確かに俺達目族にとって重要なことか……」


そう、族長が言っていたのは俺達目族が所有するもっとも大事とするもの……ガンドストーンのことだった。

このガンドストーンがなぜ、俺達目族にとって大事とされているかと言うと、俺達三つ目族と一つ目族がまだいがみ合っていたころにその二つの目族を一つにしたと言われている石だからだ。

そして、族長が言っていたこと……それは、人族からこの石が狙われているということだった。


このガンドストーンは二つしか存在せず、一つは俺達三つ目族、もう一つが一つ目族が持っている。

この石が二つの目族の友好を表していた。

そして、この石にはある隠された秘密がある。それは公にされておらず、族長又は次期族長……俺やブルーにしか明かされていない。


「……ということは、それが漏れたのか?」


俺は一人隠し部屋で自分がなぜ狙われているのかを考えた結果そう呟いていた。

俺がそのことを考えている間に、魔王様と族長の話し合いが終わり、族長は魔王様を部屋へと案内させるために案内役を呼び出していた。


「話し合いは終わり……か。さて、俺も族長に言われたとおりの職務に戻らないとな……」


俺は、魔王様が部屋へ案内されるところを見送ると、その隠し部屋から出て行った。


□□□


俺が隠し部屋から出て行き、少ししてから、俺の前に黒服の魔族達が現れていた。


「……なんだお前たちは」


俺は、その黒服の魔族達を見て、そう言った。

ただ、この黒服達は俺が魔都と行った時に襲った黒服とはまた別系統だということを感じていた。


「……我らは……魔王の使いだ」

「そうか……では、なぜ俺を囲んでいる?」

「……魔王様の会話を盗み聞きしていただろう?」


どうやら、俺が隠し部屋で族長と魔王様の会話を聞いていたことに気づかれていたからだった。


「……そうだ、隠れて聞いていたが……これの意味は」

「……我らは影の者いかなる人物であろうと油断はせぬようにだ」

「……分かった。それで、俺に何か用でもあるのか。」

「あぁ、ある。」


そして黒服たちは俺にいろいろと聞いていたきた。

まず、なぜ隠れて聞いていたことやその話を聞いて何か知っていること等々だった。


「まぁ、まず一つ目だ。俺はただ族長が魔王様に何を話そうかと言うことが知りたかったからだ。そして二つ目、知ってはいるが……教えられない。ただ、魔王様はこのことは知っているとは思う。」

「……そうか。分かった、何かあればまた聞きに来るだろうでは」


黒服達のうち一人がそういうと、黒服達全員がその場から消えていった。


「……さすがは魔王様を守るための人物達だな……」


俺はそう呟いた。

俺は、そのまま三つ目族の居住区へと行き、旅の疲れを癒していった。


□□□


次の日になり、俺は族長に呼ばれていた。


「レッドよ、何か分かった?」

「いえ、ここの所何もないと」

「そうか……魔王様がいる間に何か分かるように」

「はい。」


族長は昨日、俺が何か分かったのかを聞いてきていた。

ただ、俺は昨日ほとんど情報を掴んでいないので何もなかったと答えていた。


「……それでだ、行きに何か無かったのか?」

「……どういう意味でしょう?」

「いや、魔王様からレッドが襲われたと聞いての」

「そうですか……」


族長は俺にそう聞いてきた。

俺が魔王様と族長の話を聞き始めたのが途中だったため、俺が聞いていない時に魔王様が言っていたのかなと思い、行きにあったことを伝えた。


「……そうか、無事でよかった。」

「はい」

「この部落にいる限りは襲われぬと思うが、それでも気をつけよ」

「はい……それでは」

「うむ、吉報を待っている」


俺と族長の会話が終わり、俺は族長の部屋から外とへ出て行った。


□□□


「さてさて……今日はあいつのところにでも行ってみるかな……」


俺が、族長の部屋からでて三つ目族の居住区をうろうろしながらそう呟いた。

俺は、その人物がいると思われる場所へと足を向けた。


足を向けてから数分後、目的の場所へと着いた。


「イェロはいるか?」


俺はその場所に入り、店のカウンターで目的の人物の名前を告げた。

カウンターの人物は俺を見ると、驚いたがすぐに戻り、俺が告げた人物を指差していた。


「いるのか、よし」


俺はカウンターの人物が指を指したほうへ行き、目的の人物に挨拶をした。


「よっ、イェロ」

「……レッドか。戻ってきていたか。」

「昨日な……」

「そうか。」


その人物は目族でも変わり者である。イェロという人物だった。

このイェロは、いろいろな情報を扱う、所謂、情報屋だった。


「それで……なにか今起きていると言われている情報ない?」

「……ふむ、お前もそれを聞くか」

「んっ?……あぁ、そういうことか」


俺はイェロの言葉に疑問を持った……が、すぐに昨日の夜に出会った黒服達のことを思い出していた。


「知り合いか?」

「いや、別に」

「そうか」

「それである?」

「うむ、あるぞ。」


イェロは俺に俺がいない間に起きたと思われことを話した。


「……それは本当か?」

「あぁ、本当だ。」

「……ますます、分からない。だが、助かった、これは情報料」

「まいど……」

「それじゃな」

「あぁ」


俺は、イェロから情報を聞くだけ聞いてその場所から立ち去った。

そして、俺は立ち去ってからイェロから貰った情報をどうするか……ただそれだけを考えた。

この貰った情報は族長も知っているはずだからだ


「……本当にどういうことなのやら」


俺はそう呟きながら三つ目族の居住区から空を見上げて歩いていた。


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