第8話 勇者、己の正体について

私達はまだ、歩いていた。


「えぇっと、どこに行くのかな?」


アッシュは私にそう聞いてきた。


「もう少しなので、少々お待ちください」


私はそういい、歩いていた。

それから、しばらくして、魔王の屋敷が見えてきた。


「あそこです。」

「屋敷……?」

「はい、では呼んできますので少々お待ちください。」

「あぁ、分かった。」


私はアッシュ達にそういい、自分は屋敷の中へと入って行った。


☆☆☆


俺達は一つの屋敷の前にいた。

そこは、カールさんに連れてこられた場所だった。

カールさんは薫を呼ぶといいその屋敷の中へと入っていた。

それから考えるにおそらくここは、魔王の屋敷なのだろう……


「さて、ここで待つのはいいとしてカールさんが戻ってくるまでどうするかね……」

「そうだねぇ……まっ、考えても出てこないから普通に待つのでいいんじゃないかな?」

「それもそうだが……まぁ、いいか」


ということで俺達はただ待つことにした。

それから数分待っていると、ふと気になったことをミーナに聞いた。


「そういえば、ここに来ることに決める前にカールさんと話してたけど何を話してたんだ?」

「んっ?いや、特にこれと言ったことは話してないよ?」

「話した後に抱きしめてたじゃないか」


俺がミーナに聞いていると、隣からラーサが俺達に話しかけてきた。


「あー、あれか確かになぜだ?」

「えーっと……私にちょっと相談されたんだ」

「ふむ?」

「それで、まぁ、その相談がかわいかったので抱きしめたくなったって感じ」

「それだけか?」

「うん、それだけ」

「そうか……特に何もなかったか」


俺はそこで話をやめた。

けれど、この話をミーナに振った時、少しだけ驚きを出していたので、何か隠しているなというの感じていた。

だが、ミーナはそれを話す気はないということが顔に出ていた。

俺は、まぁ別にそんなに重要なことではないかなとも思ったので詮索することをしなかった。


それから、俺達はそれなりの世間話やら二手に分かれていたときのことやらを話していた。

そして、少ししてから屋敷の中らカールが出てきた。

ただ、カールさんの服装は俺達と一緒にいたときの漆黒のゴシックドレスとは違い……俺達には見覚えのある服装だった。

そう、あれは薫の装備一式だった。


☆☆☆


私は屋敷に入りすぐ、魔王の母に今回のことを話していた。

すると、魔王の母は「分かったわ」と言い、奥の部屋へと私を連れて行った。


「ここは?」

「ふふっ、ここわね私の服部屋。今のあなたにふさわしい服装にしてあげる。」


魔王の母はそう言い、服部屋の奥の方へと歩いていった。

私はその後に続くようについて行った。


「さぁ、これよ。」


魔王の母は一つの棚の前に立ち止まり、その棚に入っていたひとつの服や物を私の前に出してて来た。


「えっ……これって」

「ふふ、懐かしいでしょ?と言ってもそんなに時間は立ってないけれど」


私の前に出されたのは旅で使っていた、私の元々の服や装備だった。

そして、服は今の私にぴったりと合う様に作られていた。


「どうしてこれがここに?」

「いえね、貴方が元々着ていたという服をレインから渡されてね、必要な時が来るだろうと思って、私が今の貴方に合うように服を作ったの」


魔王の母はそういい、にっこりと笑っていた。


「さぁ、行ってらっしゃい。お仲間さんたちに言うのでしょう?」

「……ありがとうございます。行ってきます。」


私は魔王の母に渡された服と装備を纏い、屋敷から出て行くのであった。


□□□


そして、今私はアッシュ達の前にいる、カールという偽名を使わずアッシュ達の前に……

アッシュ達は私の服装を見て、驚いていた。

それはそうだろう、さっきまで来ていた漆黒のゴシックドレスではなく私が『俺』だった時の服装だからだ。

まぁ、ミーナだけ私を見ている目がおかしいのは気のせいだと思いたいけれど……

と驚いてたアッシュが驚きから復帰すると私に問いかけてきた。


「えーっと……カールさん?薫は……?」

「薫さんですか?……ええ、来てますよ。」


アッシュは私の言葉を聞き、えっとした顔をしていた。


「来てる……ですか……」


ラーサは私の言葉に何か思うかのように私を見ていた。

おそらく、ラーサは私のこの服装とさっきの言葉で察したのだろう……

私のことについて

ミーナに関しては二人にはばれないように若干笑っていた。

それから、数分沈黙の時間が続いた。


「……はぁ、なんて言うかそう黙られると……言いづらい……まぁ、言うけどね、始まらないし」


私はいつもの口調でそう言った。

そして、私はアッシュ達に告げた。


「久しぶりだな……私はカールじゃない、薫だ。」


そう、にっこりと笑って

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