魔王の嫁は勇者様
GN-Va
一章 魔王と勇者と
第1話 勇者、魔王と対峙する。
俺、伊崎薫は現在非常に困惑している。
というかだ……どうしてこうなった。
「さ、嫁様こちらで結婚式の準備を」
俺の周りには現在、幼稚園児ぐらいの身長の悪魔が飛んでいる。
なぜ飛んでいるかって?それは簡単な話だ、俺が魔王と婚約したからだ……
いや、婚約させられてしまったからだ……
まぁ、順を追って説明するとだ数日前までさかのぼる。
◆◆
「良くぞ来た、勇者一行よ!」
魔王は俺達が部屋に入ると、俺達を迎え入れた。
だが、相手は魔王、油断せず俺はパーティメンバーに指示を出した。
「ミーナとラーサは後衛、アッシュは俺と前衛だ。」
「「「了解」」」
俺達は、魔王と対峙するために陣形を組み魔王と相対する。
だが、魔王は構えもせず椅子に座ったまま話し出したのだ。
「なかなか、勇者一行はよい輝きを放っているな。そしてだ、気に入ったぞ勇者よ!わが嫁に相応しい魂の輝きだ。」
……ハァ?今、魔王はなんと言った?
嫁にふさわしい?一体どういうことなのだろうかと思い俺は言葉を返した。
「魔王!今、何ていった!」
「ふむ、聞こえなかったか。わが嫁に相応しいと言ったのだ」
やはり聞き間違いではなかったようだ。
しかし、ココで一つ問題が発生する。あいつは俺のことを『嫁』として相応しいと言った、つまるところアイツは見た目どおり『男』でいいのだろう。
だが、俺も『男』だ……
俺はふざけたことを言った魔王に殺気を向けた。
「まぁ、待て我は、別におぬし達と戦う理由が無い。」
「では、どういうことです!現に、あなたたち魔族は私達の国へ侵攻してきたではないですか!。」
魔王の言葉に賢者のミーナが言葉を返した。
ミーナがいった通り、俺が召喚された国。アルファンス王国に魔族達が侵攻してきたのだ。
そんな話を聞いた魔王はあごを触りながら、俺達に聞いてきた。
「ふむ、そなたの国とはどこのことだ。」
「アルファンスです。アルファンス王国」
「……ふむ、そうかそれならば、やはり我はおぬしらと戦う理由などない。
そもそも、その王国に侵攻せよという命令は一切していないのだからな。
我が魔王として認めていないものたちの行動だろう……。
……だが、それではおぬし達は納得などせぬだろう。そうであろう?」
魔王の言葉に俺達はうなずいた。
「……ふむ、それではこうするとしよう。我はおぬしらの国に一切、手を出さぬと約束しようではないか。
さらに、おぬし達の国に侵攻した者たちを我が排除しようではないか。」
「……それはほんと捉えていいのか。」
俺は、聖剣を構えたまま魔王に向かって問いかけた。
「あぁ、約束しようとも。それに信用できないと言うのなら契約魔法でもなんでも、使ってもよいぞ。ただし、一つだけ条件がある。」
「……条件とは?」
「それは、おぬし達が話し合って決めてからでよかろう。」
……それはそうかもしれないのだが、今言ってくれないと困る。
「……では、少しお待ちください。」
「よかろう。そもそもこちら側の不手際、考える時間はたくさんとある。」
俺の思いとは別にミーナは魔王と交渉を始めるための準備をし始めるのだった。
☆☆
「さて、みなさんは先ほどの魔王の言葉どう思いましたか。」
魔王の部屋から廊下まで出ると、ミーナは早速さっきの話について俺達に聞いてきた。
魔王がいうには自分が魔王としてふさわしくないと思った者たちが俺を召喚した国に攻めていったと言う話だ。
たしかに、この魔王城の城下町では王国と戦争しているという感じはまったくしなかった。
民達は平穏と暮らしている。
「俺はとりあえず、王に聞いてみたほうがいいと思うぜ」
「……それもそうですね。魔王自身、契約魔法を使ってもかまわないと
いってますし。」
「……」
アッシュとミーナは話し合いながら、ラーサは二人の会話を聞いていた。
「では、早速王に通信を取ってみましょうか。ラーサお願い」
「了解」
ラーサは自分の服から透明な水晶玉を取り出し呪文を唱えた。
すると、水晶玉が反応し王の間がその水晶玉の上に表示された。
表示された先で王は言葉を発した。
『……ラーサよ、用件はなんだ?』
「ハッ、此度の任により魔王城まで来たまではいいのですが、魔王がわが王国に侵攻せよという命令は出していないと。」
『何?もう少し詳しく話せ』
「ハッ!」
その後、王に魔王と会話したことを伝え、王は一つの結論を俺達の前に出してきた。
『ふむ……嘘か真か、聞いただけでは分からぬな……なれば、その魔王に直接話すほかなかろう。』
「ですが王!」
『あんずるな、この水晶越しでの会話だ。』
結局、ラーサはしぶしぶ承諾し俺達は魔王の部屋へと戻るのだった。
☆☆
「……戻ってきたか、では結論はどうなったのだ。」
「その前に、魔王。王がお前と話したいらしい、」
「ふむ」
ラーサは魔王に向けて水晶玉をかざし、地面に布を置き、その上に水晶玉を置いた。
『ほう……そなたが魔王か』
「ふむ、そなたが王か」
魔王と王は向かい合い、お互いの心を読むかのようにお互いの顔を凝視していた。
それから、王と魔王の会話が始まり俺達はその会話を聞きながら結論が出るまで待っていた。
少ししてから、王は俺を呼び出した。
『勇者よ……お主には悪いことをしてしまったな。結果的には魔王は魔族の良き王だった』
「いえ、これでも俺は楽しんでますから。それに、俺元の世界にこれぽっちも未練はありません。」
『……そうか、それを聞いて安心したぞ。これで心置きなくできる。』
んっ…俺は今、何か失言をしたか?
王の言葉には何か含みのある言葉が混ざっていたぞ。
『勇者よ、これは我からの最後の命令だ。』
……あ、やばい。これ100%失言してる。
俺は直感的にそう感じた。
『魔王の嫁となれ。』
…………
………
……
…
なん……だと……
『正確に言うならば、魔王が条件として出してきたことだ。
わが国としては勇者を手放すのはおしい……が魔国と戦争が発生しなくなると考えると非常によいのだ。
それは分かってくれるな?』
「アッハイ」
『ということだ。魔王よ交渉は成立でよいな?』
「うむ、こちらも異議は無い。後は契約魔法でもなんでも好きにするがよい。」
□□
こうして、魔国とアルファンス王国の争いごとは終わった。
王と魔王の会談後、俺達は……いや、正確に言うと俺以外はみな、帰還魔法でアルファンス王国へ戻っていった。
そして、王に命じられた俺は、魔国に残っている。そう、残っているのだ。
「あぁ、つまりどういうことだ……条件反射でハイっていっちまったぞ。」
「どうしたのだ、わが嫁よ」
「それだよ!あぁ、なんで俺が『嫁』になるってんだ。俺は『男』だってのに。」
「ふむ?……あぁ、なるほどな、そういうことかまぁ、時期に分かるであろう、それまでは……おい、セバス」
俺がいろいろと考え込んでいると、魔王は一体の魔族を呼び出した。
「ただいまココに」
「嫁を部屋へ」
「はっ」
俺はその後、セバスという魔族に部屋まで連れて行かれた。
そして、俺はそのままその部屋のベッドに聖剣以外の装備をはずし倒れた。
……あぁ、疲れた。魔王と決戦だと戦意を高ぶらせ突入したら、
魔王は戦わないといい、その後いろいろあって王と話あった結果、俺が魔王の『嫁』にされた。
いろいろと言いたいし、こみ上げて来るものがあるが、この後ほんとにどうしたらいいのだろうか……
そんなことを考えながら俺はそのまま眠りについた。
そして、起きた時にあんな事になるなんて、俺はまだ気がついていないのであった。
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