サディ・マディ・クエクエ ~クッコロさんは負けない~

生來 哲学

<第一話> 「きらめきの出会い」 その1

「もう一度聞くけど、本当に大丈夫か?」

 目の前で泥まみれになって倒れている制服姿の女子高生へ改めて問いかける。

 雨上がりの街で、美しい肌と髪の至る所へ茶色い土砂が張り付き、制服の大半も茶色く染まった女子高生を見つけるなんて今日はなんていい日だろう。それが気の強そうな鋭い目をしたショートヘアの美少女なのだからご褒美でしかない。

「大丈夫な訳ないでしょっ! 見て分からないっ!?」

 半ば涙を浮かべつつも、それを誤魔化すように強い口調で告げてくる。

 素晴らしいね。実に美しい。

 手にしたタオルを差し出すと彼女はがばっ、と立ち上がり手を伸ばしてきた。

 反射的に一歩後ろに下がって、タオルをかばう。

「ちょっとっ!? 何よ?」

 その反応がおかしくて思わず笑みを浮かべた。

「悪い。つい、昔飼ってた猫にしてたのと同じことした」

「なにそれ。あんた意地悪ね」

 女子高生の罵倒が実に心地よい。意地悪は褒め言葉だ。

「そう、それだ。俺は通りすがりの意地悪さ」

 そう言って、俺はタオルを自分の後ろに放り投げた。すると女子高生は文句を言うより早く、泥を振りまきながらタオルに飛びつく。とても猫っぽかった。

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