3−11

 同じ夜。アルゲバ王は動かぬ処刑人と向かい合ってニヤリと笑っていた。目の焦点が定まってないヒゲ面なのでそれはすごい形相である。王は言う。

「お前が、アルゲーノ公のクローンだったとはね。」

 処刑人に刻まれたランバー・トールスキンの顔は多くのデスマスクと同じく無表情のような笑顔を浮かべている。

「レリビディウムがなんであんな簡単にホイホイ侵入できるのか、分かったよ。そう思うだろう、わが息子よ。」

 息子と呼びかけられた処刑人は椅子にもたれて黙りこんでいる。

「やはりボクの読み通り、弟はクローンをすでに仕込んでたんだ。それでクローン同士で連絡を取り合っていた。そうか・・・ガキ共が連絡取る前にランバーが自ら侵入したのも、アルゲーノ公が死んだから、情報がつかめなくなって焦ってた、というわけだな。」

 王は処刑人の手にグラスを押し付ける。処刑人はグラスをやわらかく掴む。飲むはずもないワインをどぼどぼと注ぎ込み、王も自分のグラスに注ぎ込み、グラスとグラスを合わせてチン、という音を立てて一杯飲む。香り高い葡萄の香りに王は上機嫌になり、そして言う。

「反逆者というのはいつもイライラさせられるものだな。そもそも人間というのが反逆的性格を帯びているのが嫌いなのかもしれない。明日はわが息子となるクローンが来る。残念ながらキミに王位は上げられないけど、ボクは君の事をわが子のように愛してる。」

 そしてワインを一気に飲み干す。

「反逆者を根絶やしにできるよういくつか手を打っておいた。明日は出かけているので、もしもの時は頼んだぞ。わが子よ。」

 処刑人はグラスを持ったまま動かない。王はそのグラスをも奪ってさらに飲む。

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