2−8
「皆様、今日もご来場頂き有り難く思う。こうして真実を知る者たちが増えていく事に私自身とても心強く思う。」
レリビディウムアジトの中で、男が叫んでいた。薄い髪の毛で40代半ばといった所であろうか。フルネスは静かに傾聴する。
「私は、レリビディウムの指導者、ランバー・トールスキン。アルゲバ王1世の使途であるレリビディウム・トールスキンの曾孫であり、私の血筋だからこそ得られた幾つかの真実を皆様に紹介したいと思う。
アルゲバ王1世の政治思想は不完全ながらも崇高な理想に基づくものであった。それは、王が人間の限界をよく心得ていたからであり、そこを解決するには植人のプロセスしかなかったのだ。
ここにアルゲバ王1世の書かれた書簡がある。王は死ぬ間際にこのような記録を残している。
『私達のやった事は正しかったのか、正直全く分からない。人間は人間のままであるべきだったのかもしれない。人間は利用する生き物だからだ。』
ここで王が仰るように、植人制度の悪用を恐れていたのは誰よりも初代アルゲバ王その御方であった。この事を皆心に留めておいて欲しい。
アルゲバ王3世は祖父の思想をあまり理解していなかったと言えるが、それでも彼なりに崩壊しつつある植人国家を建て直そうと考えたには相違ない。しかしその手段が危険を孕んでいたのは言うまでもない。即ち、不法と植人を結び付けてしまったからだ。植人が元来聖職とされたのは人間が人間でなくなる過程だったからであり、これを悪用すれば恐るべき暴力が可能となる。3世はそこを理解していなかった。
そして現在の4世についていくつか知って欲しい事実が在る。
一つ目、3世は心臓発作で倒れた事になっているが、状況証拠的に殺人である。なぜならばまず、王はそれまで健康上問題ないとされていた、次に、寒い日にも関わらず何故か開いていた事、最後に、付近に身体の半分欠けたネズミの死骸があり、それが、」
ランバーはバックから取り出した紙を会場に見せつけて言った。
「テラミカ光線を受けた痕跡がある、という事がこの捨てられた捜査記録に書かれている。つまり3世はテラミカ光線を半端に照射されて死んだと言える。あれは魂を吸い取るからな。」
フルネスは驚いて声も出せなかった。
「二つ目、アルゲバ王4世は極めて危険で粗暴な気質の持ち主である事が数々の召使によって証言されている。お前達は、全く不思議に思わなかったか?アルゲバ王国の召使の応募が常に掲示板に張られている事を。アルゲバ王4世は理由はよく分からないが召使をよく処刑しているらしい。あんまり処刑が多いものだから、"処刑人"と呼ばれる殺し屋がいるという噂があり、どうやらこれは本当にいるかもしれない。いずれにせよ、アルゲバ王4世は、3世よりも極めて危険な為政者だ。注意すべきである。」
「"処刑人"?」人々はどよめいた。「やはりヤツはいるのか。」「殺しのプロなのか。」「一体何者なんだ・・・」
「三つ目。」ランバーは叫んだ。「これがお前達王国民に関わることだが、最近あちこちで人が消えているという噂を多く聞く。彼らは全くごく普通の小市民。だが実際ここ最近妙に工場に働く植人の数が増大している。だから我々は独自に植人を調査した。植人のあのマスクにはシリアル番号が書かれている。そして私は王国の書類を複写して調査した。すると、いくつかのシリアル番号で行方不明の市民が次々と適合した。しかも彼らはその植人のマスクと酷似している・・・これが意味する所は一つ、不当な逮捕が起きているという事だ!」
会場から怒号が響き、フルネスは頭を抱える。
「お前達は、戦う準備ができているか!滅びに向かう国への愛があるか!?」
ジョーもタルヒも「うぃえええい、やっぴぃいい!」と訳のわからぬ叫びを上げ、防音設備であるレリビディウムのアジト内で波のざわめきのような騒音が鳴り響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます