2−7
それから3年後の事である。
「ようフルネス!」
声変わりし始めているジョーはフルネスに話しかけた。
「なんだい、ジョー。」
「おまえ、パーティ興味あるか?」
「パーティ?」
「俺の知り合いが開いてるパーティがあってよ、すっげー楽しいからぜひフルネスも着てよ。今夜。」
「でも、僕宿題あるし。」
「宿題つっても明日のじゃないだろ?弓男もくるからさ。な。」
「うーん、わかった。」
弓男とはジョーの友人のタルヒのことだ。食堂でオバケの話を聞きつけた時に出会った長身の青年である。弓男というのはアーチェリーを趣味にしていたからそういう仇名がついた。ジョーとは隣の山に住んでいたからか話が弾んだらしい。
フルネスはジョーが以前より、少なくとも自分より積極的になったなあと感じていた。反してフルネスは落ち着いてしまい、ごく普通に授業を受ける生活に満足している。そんな時である、ジョーが話しかけてきたのは。
夜。食堂でご飯を食べた後にジョーとタルヒの後に着いていった。
「この学校は実は抜け道があってな。」
ジョーは自慢気に言う。
「校庭の木にちょっと低くて壊れた塀があるんだ。」
「外出許可を取ればいいのに。」
フルネスが言うがジョーはニヤっと笑う。何か嫌な予感がしてきたが、断れる空気でもなさそうで、フルネスはびくびく怯えていた。
「ほら、学校出るぞ。制服では怪しまれるだろうから。」
ジョーがドサっと普段着に使うシャツとズボンをフルネスに放り投げた。
「着替えるんだ。」
そうして普通の人間のフリをして学校の外を出る。フルネスは偽りの自分を演じる事に罪悪感があり、何気なく八百屋を通るおばさんも人としてみる事ができずに怯えていた。
「もうすぐ着くぞ。」 ジョーが指差した先は無味乾燥な建物であった。「『レリビティウム』のアジトへいざ行かん。」
その名を聞いてフルネスは驚いて叫んだ。
「ちょっとまってよ、レリビティウムって不法組織じゃないの!?」
「そうだな。」
「何するつもりなの?」
「この国では自分に正直なヤツほど罪を犯す。なぜだと思う?」
「・・・自制心が無くて人に迷惑をかけるから?」
「とっさにその答えが出るとはフルネス、残念だぞ。君は国に洗脳されている。」
ジョーに言われてフルネスは混乱した。
「ジョー、君レリビティウムになにされたの?」
「なにされた?なにもされていない。レリビティウムが俺を選んだのではなく俺がレリビティウムを選んだのだ。俺はずーっと前から植人の制度にムカついていた。人をがんじがらめにするなんてまるで気にくわねえとな。罪人の見せしめのためにやるなんて発想もどっか気が違ってると思っていた。だが、どれもこれも漠然とした不安に過ぎないと思っていた。」
「うん。」
「だが、俺はその時レリビディウムの人間に出会って、真実を知った。この国の王、とくに4世に変わってから、徐々におかしい事がおき始めているとな。」
ジョーはフルネスの手を掴んで叫んだのでフルネスはドキリとした。
「お前は真実を見るつもりはあるか?それとも、徐々に腐っていくこの国家の中に沈んでいきたいか?」
フルネスはわけが分からなかったが、ジョーが何か自分に一生懸命伝えたいのは分かった。仕方ない、と思ってフルネスはうなづいた。タルヒはニヤリと笑う。
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