MEGA!目が?!~クロバ様と語らない勇者ご一行様!~

銀星

バァァァァアン!と始まる華麗なる序章!


「おっほぉ~! やっぱ女子高生はたまんねえな~おい!」


 友達と遊びに行くためにウキウキしていたり、彼氏とイチャイチャするためにドキドキしていたり、そいつらを見て「……リア充、ゆるすまじ」と爪を噛む者たちが一斉に鎖から解き放たれる時間。

 とある学園の校門、柱から中を覗く怪しい影が一つ。

 少し暗めの赤髪を後ろでちょびっと結び、近年の平均身長よりは少し低いくらいの背丈で作務衣を身にまとっている。

 ちょうどココの学生と同じくらいの年代だろうか、とにもかくにも目つきが悪い。まるで犯罪者のような男が中を覗いていた。


「だぁれが犯罪者だッ!コルアッ!」


(みしッ)


 つううぅっ!何するんですかっ!

「人待ちのついでに花の女子高生眺めてなにが悪いんだよっ! 貸せ、へっぽこナレが! オレ様がやる!」  

 あーあーあー、はいってんのかコレ?

 ナウなヤングにバカウケな美青年が校門前で人を待っていました、しゃらんら。


ナ「……」


……なんだよ、なにか言いたそうな顔じゃねえかおい

ナ「いいえぇ~べっつにぃ~?」

((ぴきぴきぴき……!))


……

……

……


「す、すいません、お待たせ……しま、した……クロバさん?」

 オレ様と黒子服をまとった¨元¨ナレが取っ組み合いをしているところへちょうど昔の森学園から出てきたが声をかけてきた。

「……はあはあ……よお……遅かったじゃねえか……」

「……はあはあ……おかえりなさい、アイさん」

 にらみ合いながら服を正すオレ様たち。

「……ちょっと先生に呼び出されちゃって。……ナレさんもお疲れ様です」

「ふぅ……じゃアイさんも来たことですし、わたくしはこれで。」

 スルスルと空から縄ばしごがおりてくると、¨元¨ナレは華麗なる怪盗よろしく颯爽と飛びつき空いている方の手の中指を突き立てて帰っていった。

「おら、行くぞ」

「あ……は、はい」 

 そんなわけで俺たちも学生たちの群れに流されながら帰り道を歩き出すのだった。

 もちろん、中指を突き立て返すのも忘れてねえぜ。




――――この世は「化者」で溢れている


 お前らだって知ってるだろ?怪談とか都市伝説とか、小学生がワーキャー言いながら怖がりつつも楽しんでいるアレだ。

 オレだってガキの頃は本物を探したし、女子を驚かせて黄色い声援(?)を浴びるには最高のネタだった。

 だけどな、それは【雪】と同じなんだ。

 ガキ共からすれば学校を堂々とサボれる理由でも成長すれば寒いわ滑るわチャリンコが使えないわ、迷惑の一言だ。

 だからな、化物なんか漫画やアニメの中だけの話だと思ってたし、20年間生きてきて"化物がいる"なんていきなり言われたって"ひっじょーにキビシー"ワケだ。

「……あの、『化物』じゃなくて『化者』」

「うるっせえな! 今一番大事なところだろうがっ!」

 たくっ……。

 まあそんな言葉がささやかれるようになって……あー……えっと?

「……三年くらい……ですかね。」

 もうそんなになんのか。


 最初は確かに噂だった。

 出所不明のネタ話。せいぜい身近で「~ちゃんが都市伝説に会ったんだってー」くらいのもの。

 それが神隠しにあっただの、怪我をさせられただのと新聞の一面で取り沙汰され、テレビじゃどっかのおエラいさんが真顔で語りだした。それを見た近所のおっさんが騒ぎ出すと周りの大人も巻き込んでもうめちゃくちゃだ。

 これくらいなら「UFOを撮った」くらいの信憑性だったワケだが……。

 ついには化物が暴れまわり知っているビルが倒壊するようすがテレビに映し出されると、オカルトなんかこれっぽっちも信じてなかったオレ様ですら信じざるを得なくなっちまった。

 その日から都市伝説ニュースなんてものが当たり前に流れるようになると、そいつらは化物もとい"化者"と呼ばれるようになった。


 挙げ句の果てには幻想界?とかいうところがあるらしい。

そっから悪さをする化者共を成敗すべく「伝説対策局」なんて連中がやってきた。

 俺も詳しくはわからねえけどよ、今はそいつらに治安を守られてるってぇ寸法よ。

 それを期に交換留学生だとかなんだとかで、今まで本やアニメでしか見たことのないような化者たちがわんさかやってきた。

 ちなみにさっきの「昔の森学園」もそんな留学制度を取り入れている数少ない学校の一つだ。

 三年じゃまだまだ普及してるわけじゃねえから見たことのない奴だってたくさんいる、ってのが現状だけどな。

 

 そしてついには……


「ク、クロバさん」


 ついには……


「えっと……あの」


……はぁぁあああああああああああああああ


「……へーへー、記念すべき第一話目冒頭を任されたオレ様に何か御用ですか?」

 左右の髪をそれぞれ先端で結んで肩にちょこんと添え、垂らした前髪で顔の上半分を隠した女子高生アイが、不機嫌な気持ちをちぃ~っとも隠そうともせずにため息をつくオレ様に恐る恐る声をかけてくる。

 ちなみに今はコイツみたいな学生であふれる通学路を歩いている。

「あの……そろそろ行かないと乙姫様が……」


――――その時


びゅぅぅぅううううううううううううううっ!!!!

突如舞い降りたイタズラな妖精さんがJK達の間を駆け抜けていく……っ!


……ピラリっ


「「「きゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!」」」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」


 うら若き乙女達がスカートを抑えながら甲高い悲鳴を上げ、うら若き野郎共は歓喜の雄叫びを上げる。

 俺の目の前でも被害者が一人。

「いやあああああああああああああっ!!」

 ほお、アニメ声のようでこれは中々……とかオレ様がおっさん臭いことを考えていると……


(……ざざざざざっ!!)

 そのアニメ声に誘われた野郎共が特等席で拝もうと押し寄せてくる!

 が。


「待ちな」


「……って、おい! クロバ! なんで邪魔するんだ!」

 そう、オレ様がうら若き乙女の純潔を守るようにやつらの前に立ちはだかったのだ。

「ばーか、いいかぁ?! コイツはなぁこのクロバ様の付き人みたいなもんだ! つまりオレ様のモンってことだ! 自由にしていいのはオレ様だけだ!」

 近くにあった岩にその長い足を勢いよく落として野郎どもに言い渡す。

「く、クロバさん?!///」

 そんな突然のプロポーズに少女は何が起こっているのかわからず、はわわわわっと、とりあえず頬を真っ赤に染めている。


 やばい……オレ様カッコ良すぎる……。


「だからなぁ……」

 さっきまで野郎しかいなかった場所に色恋沙汰に敏感なJKたちも加わって何かを期待するまなざしで成り行きを見守っている。

 場に緊張が走り、オレ様の言葉を待っている。

 オレ様はそこへトドメとばかりに告げてやる。


「オレ様に見物料2000円ずつ払ってからにしやがれっ!」


 ……。


 ――――札束、宙に舞った。


「クロバさああああん?!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「うっひょおおおおお! 金だ金だ! まいどありー!」

 俺の横を野郎どもが競走馬のような勢いで通り過ぎていく。

 あとに残った女子が「信じられない……」といった様子でオレ様をゴミでも見るような目で見つめている。

 は、気のせいだ! 気のせい! 知るか! 金より大事なもんなんかねえっての! うひょひょひょひょひょひょー♪

 さあて特等席に戻りますかね~、とスキップしながらバカどもをかき分けて定位置に帰るオレ様。


びゅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!


 そして空気を読むように先ほどよりも一段と強い、まるで春一番のような突風が押し寄せ彼女たちに襲いかかるっ!


「「「きゃああああああああああああ」」」

(バタバタバタバタバタッ!!!)


 強烈な風とそれを押さえつける力の板挟みになった女の子たちの防護壁は、まるで防波堤で海風にあおられてなびく旗のような音を立てている。


イイゾッ! イケッ!

 

 野郎共と風の精が一丸となって戦うことなど、今だかつてあっただろうかっ!いや、ないっ!

 ……いや嘘だな。結構あったんだと思う。同じような場面で。


 がっ! それでも彼女たちも負けじと押さえつけるっ!


「くっ……うううう~~っ///」

 オレ様の作ったステージのおかげで、そんな女の子たちの代表となったアイ。

 自然の脅威と少女の種族を超えた激しい攻防が繰り広げられるが、彼女の"動かん"とする強い精神のおかげでなんとかお披露目されることはなく無事だ。 


 きちんと『顔』を隠し通している。


 ……は? 何言ってるかわからないって? オレ様は冷静にありのままを伝えてるだけだ。

 『顔』は隠し通している。



――――そんなわけで


……ピラリっ


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」


 さっきまでほかの女子達に夢中だった連中も集まってきた。

 へっ! ガキのパンツ見て喜んでるなんてよ。まだまだ皆おこちゃまだなうおおおおおおおおおおおおおお!


「ふぇ……?」

 そんな彼女も幾度となく挙がる歓声(オレ含む)に気づいたようだ。指の隙間からそっと状況確認をする。


右見て~

左見て~

下を見て~

……

……

……


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ザザザっ!

 今日何度目かの悲痛な叫び声と共に即座に両手をスカートめがけてスライドさせる。


「「「ああああぁ……」」」

 

 野郎どもの悲壮な声すらも消えかかっていた。

 すると今度はガラ空きになった前髪が舞い上がる。第二ラウンドの始まりだ。

こういう常に顔を隠しているようなキャラって大体目がぱっちりしてたり

可愛い顔してたりするだろ? 見たいだろ? 見たいよな?!

 ということで、気を取り直してこの可愛らしい青のしましまおパンツ様の持ち主を一目みようとアホ共が見守る中、風が最後の力を振り絞り前髪を巻き上げる!!!


 ビュオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!


 下に意識を集中していた彼女に反応できるわけもなく、徐々にその素顔が明らかになっていく。

 小さくて艶やかな唇……

 恥ずかしさからかリンゴのように蒸気したほほ……

 よし……あと少しっ! あと少しっ!

 そしてっ!

 ついに姿を現す大きくてっ! ぱっちりとしたっ! つぶらなっ!


 "一つ目"


「い、い、い……いやあああああああああああああ!!」

 本日最後の叫び声と共に血走らせた大きな目がカッと開かれる。ペル○ナっ! とか言いたくなる。

「「「ぉおおおお・・・ぎゃあああああああああああああああっ!!!」」」

 期待が恐怖へ変わった瞬間、まるで生まれたばかりの赤子のような悲鳴をあげて一目散に散っていく残念ボーイズ。


「うあああああああん! あんあんあん! うあああん! あ~んっ!」

 跡には目をカッと見開いて泣きじゃくる一つ目少女だけ、という勝者のいない焼け野原が残った。ああ俺もいたな。

 うん、誰も悪くない。


……

……

……


「……うっく……ひっく」

「おい……いい加減泣きやめよ」

「だって……っ!だって……っ!うう……ぐすん」

「もうあれから一時間だぞ?たくっ……たかがパンツ見られたぐら」

「うわあああああああああああああああああああああああああん!!!」

「……いで……」

 はぁ……

 俺の疲れた心を解きほぐしてくれるのはこの上質な珈琲の香りだけさ・・・だばだー

 この泣き虫女をあのままあそこに放置しておくワケにもいかず(まるでオレが泣かせているような避難の目に耐えられず)喫茶店に連れてきたってワケだ。


 彼女の名前は「アイ」。聞いての通り"一つ目"の少女。

 さっき説明した"化者"だ。

 まぁ今まで恐怖の対象とされてきた怪談に出てくるような生物が、いきなり身近に現れたらさっきのような騒ぎになるわけで。ついでに人見知りで恥ずかしガールでもある彼女は顔をさらすことに抵抗があるらしい。

 なんとか家っていう化者達の間じゃ名門の娘らしい。

 伝説対策局とかいう……まあ化者専門の警察みたいなもんだ。今は訳あって俺の監視兼世話係をやっている。


「そうよぉ~小ぶりで若々しいお尻にあったキュートなおパンツだったわよぅ?私のトシになるとそれすら履けなくなるし喜ばれるなんて素敵なことよぅ~」

 と言いながらチャイナドレスのスリットに手をかけるが、そのおみ足が顔をのぞかせたところで裾を踏んづけてやる。全力で。

「裾に手をかけるなっ! あとトシじゃなくても履くんじゃねえっ! "おっさん"の汚ねぇモンなんか誰も見たくねえんだよっ!」

「あらやだ、照れちゃってもぉ。憧れの乙姫ちゃんにまた会えて嬉しいのねん? もぉシャイボーイなんだからぁ~そぉいうところがぁ~か・わ・い・い・ゾ(はあと」

バチコーン☆

……おえ~っ


 ……このシレっと登場しやがったのは「乙姫」。そう、あの浦島太郎に出てくる美人で有名な乙姫様。

 違うところは美人とはかけ離れた、いわゆる"おネエ"さまだ。

 だがこう見えて竜宮城だけでなく、今はアイが務める伝説対策局まで取り仕切る大ボスだ。ちなみにこの乙姫は三代目。


 今日はコイツに会うためにやってきたワケなんだが……

さっきの事件で遅くなっちまった俺達を待ちきれずに自ら出向いてきたらしい。たい焼きを片手に見物していたところをオレ様に捕獲されアイを一緒に引きずってきたってワケだ。

 とてもお偉いさんがすることとは思えねえよなぁ。


「ひっぐ……うぅ……乙姫様? ……ずずっ」

 今の今まで自慢の一つ目から涙を噴水のように噴き出していたアイが上司の存在に気づいたようだ。

「あら、もういいのぉ? ほら元気になったんならたーんとお食べなさい。嫌なことなんて食べて忘れるのが一番よぉ。」

 いいコいいコ~、と頭を撫でてやりながらメニューを渡す乙姫。

「ぐす……はい……。……すびばせん、『究極の贅沢フルーツパフェ』に『至高の白玉三昧あんみつ』、それと……」

「……結構余裕あんじゃねえのか? コイツ」

 と、目の前にどすんっ!と重そうな音を立てて「¥」の文字の入った大きなきんちゃく袋をテーブルに置くアイ。

「へえ、やっぱ特別な警察だけあってお前みたいのでも結構もらってんだな、にしてもその袋どっかで……」

 と自分の椅子の下を覗き込み何かを確認すると、慌てて卓上に戻ってくるクロバ。

「?! てめえ! その金!」

「マズター! このお金である分だけ! 甘いもの持っでぎでぐださい!ずずっ……クロバさん、私警察ですよ? 逮捕でできちゃうんですよ? これは『私が稼いだお金』ですよ?ね!」

 自分の目つきの悪さに唯一対抗できるであろう、といっても過言ではない涙を貯めた大きな一つ目に睨まれてクロバは大きくのけぞる。

「ぐっ……!」

「おほほほほ! マスタァ~あたしたちにも珈琲おかわりねん、ミルクもたぁっぷり付けて頂戴☆ 領収書はぁ~宛にお願いねん♪」


 くううううううう……っ!!

 ざけんなっ!くそおおおおおおおおおお!!!


……

……

……


ずずずーっ


「それでぇ? 今日が約束の二週間なんだけどぉ、二人のうちどっちをパートナーにするか決まったわけ?」

「ふん……決まってなかったらこんなとこ来てねえだろ。お前が役人じゃなきゃ金だけもらってトンズラしてるとこなのによ」

 オレ様はテーブルに突っ伏してぶーたれながら答える。

「あら、それもそうねん。で、誰? 誰なの? ねえねえ、お姉さんに教えなさいよぉ」

 両手を合わせながら上目遣いでズズィっと距離を詰めてくる乙姫。

「近寄んな、気持ちワリい! なんでちょっと恋バナに花を咲かせるJKみたいに聞いてくるんだよ!」

 バニラエッセンスのような甘い香りを漂わせてくる"おっさん"を押し戻してやる。全力で。

 ちなみにさっきまで泣いてたカラスことアイは目もくれずにもくもくとデザートを消化している。


「そうだな……俺のパートナーは……」


 ……っとその前に。

 こいつらと何があってこんな話をしてるのか二週間前の説明をしねぇとな。

 そしてついについについにっ! オレ様の秘密が明らかになるぜ! そんじゃお前ら回想だ、心して聞くように!!

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