波乱万丈な体育祭~なんでもあり? ~《パン食い競走》
「……頭おかしいだろ、これ」
校庭のトラックの内側全体に、藤棚よろしく吊り下げられたパンたち。
開始前には袋が被せてあった。
被せていても、焼きたての香ばしい香りは抑えられない。
直前になり、委員と教師総出で袋を取り除いていた。
一気に香りが充満する。
並びに規則性はなく、おなじパンが隣にあったりした。
「これには特別ルールがある。……パンを咥え、先についたメンバーが他のメンバーの口にパンを入れてもいい。即ち! 禁じ手が使える。ただし、自分には適用されない」
え? チート?
『この度からパン食い競走には特別ルールができました。……パンを咥え、先についたメンバーが他のメンバーの口にパンを入れてもいいというものです 。即ち手が使えます。ただし、自分には適用されません。すべては時間短縮のためです』
「あ……」
隆一の補足の次に説明が入る。
やけに設定が細かい。
さらに被せてくる。
どれだけ時間短縮したいんだよ。
「ま、取り敢えず。作戦はこうだ」
共闘するはずのセンパイ方は後ろでおしゃべりに興じていた。
このあとヤル気のないセンパイの、他に活用源のない特技を目の当たりにすることになる。
「優多、おまえはトップで適当にいくつか咥えて走り抜けろ」
「……は? 」
「あ〜ん掛りはおまえだ! 」
「……もう1回言ってみろ」
「待て、話は最後まで聞いてくれ。今にも取り殺さんばかりの形相で見つめてくれるな」
脂汗タラタラで俺に弁明を図ろうとする親友。
俺にヒロインを強要するとはいい度胸してんな。
「勝利を掴むためにはおまえじゃないとダメなんだ。センパイ方の好きなパンは把握したろ? この闘いには戦略が必要だ。食堂のおばちゃんと三浦センセの意図を察し、的確に行動できるのはおまえをおいて他に居ない!
……パンは放り込めばいい」
「確かに……完食する勢いで食べてもらえたら嬉しいかもね」
『お残しは許しまへんで! 』のおばちゃんが頭を過ぎった。
「……よし、一肌脱ごう」
脳内ではオープニングではなく、エンディングがエンドレスで再生されている。
ヤバい、あのアニメ好きなんだ。
「優多……! 」
「おまえらはパンを落とさせるな。それが絶対条件だ───って隆一どこだよ?
」
譲もハッとして頭を巡らせる。
「あ、あそこ。三浦先生のとこだね」
「ホントだ、何してんだ? 」
そうこうしているうちに駆けてくる。
「最初に着いたやつは! 手でパン取っていいってさー! 最初に1個口で確保が条件だ! 」
なんでもありだな。
「三浦先生も必死なんだね」
去年の二の舞にならなければ譲歩しちゃうわけね。
「……タダじゃ転ばねぇ。デカいポストには頑張ってもらおうぜ」
「え? ……あ、あははは」
察してくれたらしい。
俺ばっかりはごめんだからな。
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