コライド戦記

@takesi99

第1話暗雲の時

コライド王国、長い戦の時を経て、国を復興してからまだ、10年程しか時が経ってない。


それは、近隣諸国も同じだった。


コライド王国の王、パラノイヤ2世は、長い戦の後、近隣の国々を周り、和平条約を結ぶ事


に成功した。


それから10年のあまりは平和な時が過ぎていたが、北方に位置するバルガス大国に4ヵ月


前から不穏な動きがあると言う噂が流れていた。


パラノイヤはすぐに密偵を密かに送り込み、情報の収集をした。


しかし、10日前から密偵からの情報が途絶えた。


パラノイヤは椅子に座りながら考え込んでいた。


テーブルに置かれたワイングラスを手に取り、ゆっくりと飲みながら低い声でつぶやいた。


「まずいな・・・・・・このままでは・・・・・・」


そんなことを呟いていると、寝室のドアがコン、コン、コン、と叩かれた。


パラノイヤ


「はいれ・・・・・・」


「失礼します、陛下・・・・・・」と言う声がした。


ドアが開かれると、この国の宰相であるギサルが敬礼をしながら入ってきた。


パラノイヤはギサルを見ながら、ため息をついた。


ギサルはそのたため息が何を意味するのか悟った。


ギサル


「陛下、密偵が消息をたってからもう、10も経ちます、やはり、噂は本当かもしれませ


ん・・・・・・」


パラノイヤ


「そうか、ギサル、まあ、ここに座れ・・・・・・」


ギサル


「失礼します」と言って椅子に座った。


パラノイヤ


「そちも付き合え・・・・・・」


と言って、パラノイヤはギサルにグラスを出して、ワインをついだ」


ギサルは何も言わずにワイングラスを手に取り、一口飲んだ。


王のすぐれない顔を見ていると、ギサルは心が傷んだ。


コライド王国は豊かな国であり、国の人々はもう、戦争など、誰しもが望んでなどいなかっ


た。


パラノイア


「ギサルよ、窓を開けてくれんか・・・・・・」


ギサルは「風を入れましょう、殿下・・・・・・」


といって席をたち、窓のカーテンを開けた。


窓から涼しくて爽やかな風が部屋に入ってきた。


木々のにおいが心地よく微香をくすぐる。


パラノイア


「ギサルよ、あの戦いからもう、何年ほど時がたったかのう・・・・・・」


と王は言った。


ギサルは少し考えながら答えた。


「はい、陛下、10年ほどになりましようか・・・・・・」


パラノイアはまだ、あれから10年しか経ってないのかと思いながら言う。


「そうか、まだ、10年ほどしか経っておらんか・・・・・・」


ギサル


「殿下、人は愚かなものです、同じ過ちを繰り返します・・・・・・」


とギサルは言う。


パラノイアは何もいはずに、ワインを一口飲んだ。


窓の外から、綺麗な一匹の小鳥が入ってきて、パラノイア王の肩に止まった。


パラノイアは笑いながら、小鳥の方に手をさしだした。


小鳥は王の指に止まり、少ししてから外に飛び去っていった。


ギサルは、今回のこの問題があまり、悩んでいる時間がないことを感じていた。


ギサルは意を決して王に進言した。


この事をいえば、王が激怒して、何らかの処罰を受けるだろうと思っていたが、王は冷静に


対処した。


ギサル


「陛下、バルガス大国は、近々、兵をあげ、近隣諸国に戦争を仕掛けるでしょう。


どうでしょう、この際、大使をバルガス大国に送って、再度、同盟を結んでみて


は・・・・・・さすれば、この国は安泰かと・・・・・・」


と、苦肉の策を王に進言した。


しかし、パラノイアはギサルの進言の中に、あくまでもこの国を案じて言っているだけ


で、ギサルの本心はこの言葉にないことを悟った。


パラノイアはギサルに言う。


「ふむ、この国の事を思えば、確かにそちの進言は正しい、しかし、ギサルよ、私には


お前がこの国の事を思って言っているだけで、本心は、違うように聞こえるのだがな、


どうだ、お前は本当にそう思っているのか・・・・・・」


と王は言った。


ギサルは王に心を見透かされて、言う。


「申し訳ありません、殿下、確かにいま進言したことは、私の本心ではありません、しか


し、殿下・・・・・・」


そう言おうとしたギサルを王に手で制した。


パラノイアとて、祖国を思う気持ちはギサルと一緒だった。


だが、パラノイアは、バルガス大国の横暴を許す気はなかった。


もしも、近隣諸国を見捨てるような事をしたら、今まで諸国を回ってやってきた平和条約の


功績がすべて無駄になってしまう。


それだけはパラノイアは許す事が出来なかった。


それに、やっと平和が訪れたと言うのに、その事を無視するバルガス大国を許す事は決して


出来ないと、パラノイアは苦々しく思っていた。


確かに綺麗事は通用しないのかもしれない。


だが、それでもやっと手に入れた平和を


いつの世にも権力者たちは、自分の私腹を肥やす事に貪欲で、民のことなど、考えもしな


い。


まして、大国ならば、平然と何でも奪うためにやるだろう。


王は、ため息をつきながらギサルに言う。


「ギサルよ、わが軍の兵力と糧食はどのくらいあるか・・・・・・」


ギサルは資料をめくって言う。


「陛下、かんばしくありません、現在、わが軍の総戦力は、騎兵が1万2000千、


歩兵が8000千、弓兵が6000千、投石兵が500百、補給兵が3百50十、合わせて2万6千8百50騎


ほどです。


糧食は、戦いになれば、およそ7カ月しかもちません。


このままではかなり不利かと思います・・・・・・」


とギサルは正確に答えた。


パラノイアは「そうか」と言い考えていた。


ギサルは言う。


「失礼ながら陛下、バルガス大国はおそらくわれわれの軍を遥かに凌ぐでしよう、


このままでは・・・・・・」


パラノイア


「ふむ、この国も近隣諸国もバルガス大国のお陰で、不安が積もってくると言うことか、


ギサルよ、周辺諸国の動向はどうだ・・・・・・」


ギサル


「はいっ、陛下、すでにバルガス大国の最も近いザーレント王国は、同盟を結んだとのこと


です。


おそらくバルガス大国は周辺諸国に対して、大使えを派遣し、同盟をつくるつもりでしよう


しかし、すでにわが国も近隣諸国に大使を派遣しております、いくつかの国はすでにわが国


と同盟を表明しております。


しかし、油断は出来ません、陛下・・・・・・」


と言った。


「うむ」と王は言った。


ギサルは言う。


「陛下、今は、いかに情報を集めるかが戦いの鍵を握ってくるでしよう、現在、情報を集め


ておりますので、作戦はそれからがよろしいかと、あと、1日もすれば、いろいろと集まり


ましょう、確かに時間がないのはわかりますが、ここで焦っては、効も逃しましょう。


なにとど、懸命なご判断を賜りたく存じ上げます・・・・・・」


パラノイアは確かにギサルの言うとうりだ。ここで焦っては、もともこうもない。


パラノイアは言う。


「ギサルよ、お前の進言ありがたくもらをう、では、会議は明日のどの時間にすればよ


い・・・・・」


ギサルは王が懸命なお方で助かったと思いながら、改めて、心のなかで忠誠を誓った。


この戦いは、なんとしても負けるはけにはいかない。


もしも、死ぬことになっても、後悔は無くなった。


そんな事を考えながら言う。


「はっ、明日の2時ぐらいがよろしいかと、わが軍の放った密偵もその前に帰還します。


それで、よろしいでしようか・・・・・・」

パラノイア


「ああっ頼む、ギサルよ、では、作戦は明日の2時からとりおこなう、下がってよい


ぞ・・・・・・」


ギサルは「はっ、失礼いたします、陛下・・・・・・」


と言って、ドアを開けて、下がった。


ミザン総司令官は、地図をみながら軍師のハーレンと話をしていた。


まだ、コライド王国は戦う準備がっできていない。


2人は、どうすればバルガスの大国とまともに戦えるのか、検討していた。


コライド王国の軍師であるハーレンは言う。


「ミザン様、おそらくバルガスは、近隣諸国と戦わずして来ることが予測されます。


何故なら、バルガスは、近隣諸国に兵力で勝る力を持っているでしよう、その為に、降伏


勧告を出しながら、兵力を吸収して、この国に来るかもしれません・・・・・」


と言った。


ミザンは考えていた。


一体、何故、いままでこれほどの兵力を整える事が出来たのだろう。


その情報が、何故、伝わってくるのがこれほどの遅くなったのだ、普通なら考えられない。


ミザンはその事を軍師に話した。


「ハーレン、俺にはよくわからんのだが、何故、このようなことに今まで、誰もきずかんの


だ、あり得ないことであろう、しかも、あの国は大国だぞ、不穏な動きがあれば、きずであ


ろう、それが、何故、今になってきずくのだ。どうなっておる・・・・・・」


ミザンは不思議で仕方なかった。


ハーレン少し、考えながら言う。


「確かに、その件に関しては私も疑問に思いました。


もしかすると、周辺諸国のなかに、密かにバルガスと密約をしていた国があるでしよう、し


かも、おそらく多くの国が関与しているとしか、考えられません・・・・・・」


ミザンは驚きながら言う。


「バカな、あの戦争で、多くの国が被害にあったんだぞ、あり得ん・・・・・・」


ミザンはまさかと思いながら言った。


ハーレンは苦しい顔をしながら言う。


「しかし、ミザン様、そう考えるほか、あり得ません、ギサル様がいっておられました。


国の王は、必ずしも賢明ではないと・・・・・・」


それを聞いたミザンは言葉を失った。


確かに、そう考えるほか、このような異常な事態はあり得ない。


ミザンはしばらく、放心状態になった。


ハーレンも認めたくはなかったが、現実がそれを証明していた。


ミザンは正気をとりもだして考えていた。


まず、コライド王国は南方に位置し、バルガス大国は北方に位置していた。


その真ん中にいろいろな諸国があるのだが、バルガス大国の周辺諸国はまず、敵と見なして


いいだろう。


とは言え、すべての国が敵ではない。こちらに近い周辺諸国が味方につけば、十分に戦え


る。


問題は、バルガス大国の動きがやけに早いと言うことだ。


まあっ、戦いを仕掛けて切るのだから、当たり前であるのだが・・・・・・


軍師のハーレンはも、考えていた。


彼は言う。


ミザン様、この地図から見て、丁度、半分の国境がありますよね・・・・・・」


ミザンは地図をみながら言う。


「ああっ、ユーレスト王国辺りのところか・・・・・・」


ハーレン


「そうです、敵がまず、最も落としたい城と言うと、まず、ここでしよう。


可能かどうかわかりませんが、ユーレスト王国に今から、使者を使わせて、一刻も早く、ユ


ーレスト王国をの軍と民を南下させ、全軍の撤退をしていただきます・・・・・・」


ミザン


「しかし、そんな事をバルガスやあの国の同盟国が許すまい、どうするのだ・・・・・・」


ハーレン


「ええっ、ですから、ユーレスト王国に最も近い諸国にすべて、働きかけてユーレスト王国


の護衛をします。ただし、敵が追ってきて戦いを仕掛けてきたら、防衛ラインを率い、少し


戦って、その部隊もすぐに撤退させます。要は、時間を稼ぎながら、諸国の兵力をわが国の


近くまで集めることが目的です。糧食はこの国と周辺諸国で、出来る限りの集めます。


足りない兵力は、民から志願者を募って集めます。丁度、民もバルガス大国に心底腹をたて


ておりますので大丈夫でしよう。わが国周辺諸国の全兵力をこのバレスト領域に集めます。


兵力が整い次第北方に目指して、進撃をかけます。


すこしづつ、領土を取り返して、糧食を集めながら、籠城しながら兵を休めて、進撃を仕掛


けます。ただし、敵兵が逃げたら、時と場合にもよりますが、追撃はしません。


そのなかで、捕虜から、情報を聞き出して、次の作戦を考えます。いかがでしよう、無理を


言っているのは、承知しております。


ミザンは確かにハーレンの戦略は良い方法だと思った。


しかし、その戦略を受け入れるだろうか・・・・・・・しかも、今から使者を出して、仮に


承知しても国事態の撤退となると時間がかかる。


敵も到底、きずくだろうし、この方法を採用するには、無理がありすぎる。ミザンの答えは


こうだった。


「ハーレンよ、やはり、無理だな、この作戦、承諾出来ん。第一、使者に誰を使わすのだ。


並の者では、使者の資格自体無理だ、すまんな、ハーレンよ・・・・・・」


だが、ハーレンは少しも動揺した様子もなく、言う。


「いえ、ミザン様、仕方がありません、私とて、無理を承知で言ったのですから・・・・」


と笑った。


その時、ドアが開き、パラノイア王が部屋に入ってきた。


ミザンとハーレンは、膝をつきながら、平伏した。


ミザン


「こっ、これはパラノイア様、このような場所にお越しくださるとは、いったい、どのよう


なご用件でありましようか、しかも、このようなお時間にお越しくださいますと


は・・・・・・」


パラノイア王は言う。


「何、ちと、眠れんのでな、城内を歩いておったのだ、ところで、ミザンよ・・・・・・」


ミザン


「はっ」


先程、話していた、ハーレンの戦略件、わしにも聞かせてくれぬか・・・・・・」


ミザンが何か言うをうとしたとき、ハーレンが先に言う。


ハーレン


「恐れながら、陛下、この策略には、重要な穴が開いております、その事はミザン様にも指


摘されました、お見苦しい話をしてしてしまい、誠にもうしはけありません・・・・・・」


と言った。


しかし、パラノイア王はそうは思わなかった。


パラノイア王は言う。


「よい、ハーレンよ、それにミザン、このような時間まで、仕事をさせてすまぬと思ってい


る、だか、今はそちたちの力が重要だ、随分と疲れておろう、少し休憩をして私と世間話で


も話さんか、私は、今日、なかなか眠れんのでな、ついて参れ、私の部屋で話そ


う・・・・・・」


ミザンとハーレンは「はっ」と言って、王に従った。


長い回廊を歩いていると、外の景色が見えた。


虫のきれいな鳴き声と美しい月の明かりが照らし出していた。


まるで何もないかのように静で気持ちがよかった

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