第229話 ハルとの絆

 ユキと初めて結ばれた日の翌日、双子の妹であるハルが嫁の日だった。


 彼女も、ユキと同様、優より身長が高くなるほど成長していた。

 顔もちろん、ユキとそっくりの美少女だ。


 しかし性格はかなり異なり、今だに俺のことを『ご主人様』と呼んでいる。

 そんな彼女にも、まだ手を出したことはない。


 しかし、ひょっとしたらユキから何か聞いていたのだろうか。


 いつも通り混浴するときから、意識しているというか……赤くなっているし、彼女にしては積極的で、いつもより丁寧に背中を流してくれた。


「……ご主人様、私に隠していること、ありますよね……」


 一緒に湯船に浸かっているときに、そんな風に聞かれてしまった。


「……いや、まあ……隠しているっていうか……えっと、誰かから何か聞いたか?」


「……やっぱり……ユキちゃん、何も言っていないけど、幸せそうな顔を見たら分かります……うらやましいです……」


 ちょっと拗ねたような表情を浮かべるハル……むちゃくちゃかわいい。

 性格はかなり異なるが、やはり双子だ。拗ねるタイミングもよく似ている。


 優が完璧な理想の『嫁』、ユキが『小悪魔』だとすると……ハルは、現代風に言えば、俺のことを慕ってくれる下級生の女の子、という感じだろうか。

 これはこれで、ものすごく惹かれてしまう……。


「あの……ご主人様、私だけ何にもないのは……ひょっとして、私、他の人のところにお嫁さんに出されるんですか?」


 さすが双子、ユキと同じような質問をしてきた……っていうか、二人で悩み、打ち明け合っているって言ってたな……。


「……ユキにも言ったけど、そんなこと、絶対にないよ。俺は我がままだから……その……ハルのことも、手放したくないし……」


 彼女にも、正直に自分の気持ちを打ち明けた。


「……でも、ユキちゃんの方が大事なんですよね?」


 やばい……ユキに先に手を出したこと、相当気にしているようだ……。


「えっと、いや、それはタイミング、つまり間の悪さというか……、あ、でも、ハルと俺にだけ、秘密があるじゃないか」


「……秘密?」


「ああ……俺が一番最初にキス……口づけしたの、ハルじゃないか」


「……あっ……」


 彼女は、はっとしたように目を見開いた。

 そう、俺と彼女は……まだ仮押さえで、前田邸に閉じ込められていたときに、ちょっとした事件があって、その時にファーストキスをしていたのだ。


「優より先だったんだ……だから、そういう意味では、ハルは一番だったんだよ」


「……そう、ですね……ごめんなさい、あのとき、私、ご主人様が助けに来てくれて、安心して、嬉しくって、大好きで……それで……」


 ちょっと涙目になっている。


「いや、俺も嬉しかったよ。助けてあげることができたし、俺もハルが最初で良かったと思っているよ」


 俺が笑顔でそう言うと、ハルは、涙目のまま、


「……ご主人様、大好きです!」


 と、裸のまま、大胆にも抱きついて来た……これで、俺は直感した。ハルとも今夜、結ばれる、と……。


 そして俺たちは、一緒の床についた。

 ハルは、少し震えていた。


 そっと抱き締め、しばらくそのままでいると、落ち着いたのか、震えは止ったようだった。


 唇を重ねる。


 ファーストキスの時のような、軽く触れあうものではなく、大人のそれだった。

 ハルも、『女の子』から、いつの間にか一人前の大人の女性へと成長していたのだ。


 そして俺は、彼女が唯一纏っていた薄い襦袢を脱がせた。


「あの……ご主人様……ちょっと怖いから……優しくお願いしますね……」


 赤くなりながらそんな言葉をかけてくる美少女に、ほんの少しの罪悪感と、溢れるほどの愛おしさを感じていた。


……。


…………。


……………………。


 ――全てが終わった後、ハルは、少し泣いているように見えた。


 辛かったのか、と、また少し罪悪感を感じたが、


「やっと思いを遂げられた、うれし涙です……」


 彼女はけなげにも、俺を気遣うようにそう言ってくれた。


 そしてしばらくすると、幸せそうな顔で、すやすやと寝息を立てていた。


 嫁達の中で、一番俺を立ててくれる、気遣ってくれる、優しい美少女。

 そんな彼女の事も、一生をかけて大事に守っていこうと、固く心に誓ったのだった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る