第206話 番外編15-3 健康診断(身体測定) その2
上半身裸で、下半身はなぜか紺色のブルマのみを穿いている十代中頃~二十代前半の女性が十数人。
顔が熱くなるのを感じてはいるが、ここで動揺してしまってはいけない。
特に何も言わず、順番に椅子に座ってもらうようにする。
聴診器を使うって言うことは、当たり前だが、本当に目の前に胸があるわけで……。
はっ、いけない、何を考えているんだ。これは健康診断なんだ、と、なんとか理性を取り戻す。
まず、最初に診察するのはナツだ。
嫁が優先されるらしいが、凛と優は事前に練習で診察しているので除外。
その二人には、診察が終わった後の女の子達の身長、体重、胸囲、視力、血圧などを順番に測定していってもらうことになっている。
これらは専門知識がなくても測定できるから、仙人と思われている俺でなくても大丈夫だろう、という配慮だ(全部俺が測定してたら日が暮れてしまう)。
ナツの問診票を見てみると、特に気になる点はないと書いている。
彼女の裸は、一応嫁だし、何度も見ている。
しかし、これだけ明るい場面でっていうのはあんまりなかったわけで……。
引き締まった体の割に、胸は大きい。
表情は……いや、この場面で彼女の顔を直視できないので、とにかく診察に集中する。
聴診器を当てると、はっきりとした、力強い鼓動が聞こえて来た。
心拍も落ち着いている。
凛と優を聞いたときもその違いが分かったが、ナツはさらに明瞭で、本当に元気なんだと安心すると同時に、なにか人体の神秘さえ感じてしまう。
聴診器を当てる場所を変え、大きく呼吸をするように指示する。
綺麗な呼吸音だ。
背中側も同じように確認するが、問題はなさそうだ。
ちなみに、俺は医者でも何でもないのだが、ある程度勉強はしていて、明らかにおかしい場合は分かる。
心音、呼吸音とも、一言で言えば『苦しそう』に感じる場合は明らかに異常だ。
とはいえ、俺の診断だけでは心許ないので、一応録音しておいて叔父の知り合いの医者に後日聞いてもらうことにはなっている。
もう一度正面を向いてもらって、今度は覚悟を決めてきちんと目を見つめ、黄疸がないか、次に目の下を確認して貧血がないかを確認する。
これらは素人の俺でも、ある程度確認できる。
喉の中も見て、赤くなっていないことを確認。
これで一通り終了。
「うん、これで終わったよ。次は優のところで身体測定だ」
「……私、どうだったんだ?」
「ああ、健康だったとしても、結果はこの場では言わないことになっているんだ。だって、みんなに知られてしまうだろう? 後で本人だけに言うよ」
「なるほど……うん、分かった」
ちょっとだけ不満そうだけど、ナツは照れたり、恥ずかしそうにした様子もなく、ただぺこりと頭を下げてそのまま次へ移っていった。
うん、一人目はまあまあうまくいった。大分落ち着いてきたぞ。
次は、ユキだ。
えっと、問診票で、自分の体で気になる点、何て書いているのか……。
『タクの赤ちゃん、きちんと身ごもれるか心配』
……この状況でそんな質問、書かないでくれ……。
彼女とはよく混浴もしているし、胸も見慣れて……えっ?
しばらくぶりに見たその胸、前より明らかに大きくなっている……。
これはもう、『可愛らしい胸』っていうのではなく、一人前の女性に近づきつつある……。
「タク、おっぱい大きくなったでしょう?」
う……笑顔で、ちょっと赤くなりながらそんな話を振ってくるとは……あなどりがたし。
まだ現代で言えば中学生のユキとは深い関係にはなっていないわけで……。
いやいや、ここは健康診断の場だ。余計なことは考えず、
「うん、そんな気もするな。成長しているよ」
と少しだけ褒めて、診察に集中する。
心音は……うん、彼女も元気だ。
ちょっとナツより鼓動が早く、トーンが高い感じがする。
周期的な綺麗な心音。ユキのイメージにピッタリだ。
その他の項目も、特には問題なし。
今回も結果は言わず、ただ笑顔だけ見せて、優のところに行くよう指示すると、
「はーい」
と元気に返事して手を振りながら帰っていった。
俺もそれに合わせて手を振ったわけで……うっ、なんか他の女の子の視線がちょっと変わった……っていうか、なにかヒソヒソ話している。
うらやましい、とかいう声も聞こえてきたが……今の何をそう思うのだろうか?
次は、ユキの双子の妹、ハルだ。
ハルの問診表の質問は……。
「ご主人様の赤ちゃんが無事に身ごもれるか、心配です」
……さすが双子、ユキと同じような事を書いている……。
で、ちょっと恥ずかしそうにしているユキ、手をどかしてその胸を見てみると……ユキと瓜二つで、きちんと成長している!
そして心音を聞いて、さらに驚いた。
同一人物かと思うほど、心音がそっくりだったのだ。
双子って、これほど似るものなんだな……。
またしても人体の神秘を感じてしまう。
そして、二人とも俺の嫁なわけであって……。
なんか、嬉しいような、俺だけこんな可愛い女の子を独占していて、申し訳ないような、複雑な心境だ。
そしてハルも健康であることを確認して、次に移るよう告げると、きちんと挨拶をして移動していった。
ふう、なんとか三人、無事終了。
ただ、ここまでは嫁、つまり身内であるわけで、そういう意味では次からが試練だ。
えっと、四人目は……うっ!
よりによって、お梅さんだ……。
旧岸部藩から来た姉妹の姉の方で、元遊女。
確か満年齢で二十二歳ぐらい、完全な大人の女性だ。
ちらっと見たその胸は、大きく、色っぽく……さっきの十代半ばの双子とは、さすがに全然違って見える。
「よろしくお願い致しますわ、センセイ……」
妙になめかましい言葉と視線で、まるで誘惑するような甘い口調でそう声をかけてくる。
ちょっと咳払いして、問診票を見ると、
「最近、胸が苦しくて……」
と書いている。
これは……本当に何かの病気かもしれない。
俺は冷静を装って、いつも苦しいのですか、それとも何かの拍子に苦しくなるのですか、と聞いてみたのだが、彼女は俺の耳元に両手をあてがって、こっそりと話しかけてきた。
「……タクヤさんのこと考えると、どうしようもないほど胸が苦しくて……」
……絶対にからかわれている……。
そうと分かっていても、さらに赤くなる自分がいるわけで……。
健康診断、まだ始まったばかりだというのに、本当に前途多難だ……。
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