十日目 午後二時
『イーグライフ』の雛が輝くドヤ顔を浮かべていたのだが、暫くすると挙動不審になり始めた。そしてそっと証拠隠滅を図るようにどんぐりを『ニィド』に見えない背に隠してしまった。
ああ、どんぐりの帽子が割れてる……。
無理矢理押し込めた結果がそこにはあった。切ない。
『お主の名前を決めたのはこの少女だったのだな』
……びっくりした。
いつの間にかフェリスが私の背後にいた。
「あ、ああ……気に入ってる」
思わず動揺して吃ってしまったが、フェリスは気にした様子もなくにこにこと機嫌良さげに頷いていた。
『名前は良いものだの。自分が自分足り得るもので最も重要なものは、ワシは名前だと思っておる』
まあ他にも色々あるが、と言い終えると先代を思い出しているのかフェリスは数秒ほど瞼を閉じた。
『っと、そうじゃったそうじゃった。そこの『イーグライフ』の子で来たんじゃったな。親の場所はもうワシが知っておる』
思ったより早く子供の親が見つかるな。良いことだけど、ちょっと寂しいような。
自分のことを話していると気がついたからか、背にどんぐりを隠したままの雛がてくてくこちらに歩いてくる。歩いてくるのは良いのだが、多分どんぐりが『ニィド』に丸見えだと思う。
どんぐりを気にしてかこちらをちらちら伺っているハリネズミがショックを受けないように、私はもう一粒どんぐりを向こうに転がした。ついでにもう二粒三粒ころころ。どんぐり一杯コレクション。
「出来ればそこまで案内してくれないか」
どんぐりを転がし終えるとフェリスに雛の親の場所まで連れていってくれないか頼んでみた。が、フェリスは気乗りしないようだった。
『う、うむ……連れていくことは出来るんだがな……彼処は子煩悩だからの……』
何となく理解出来た。あれだ。ヴァイアスと似たような状況なのだろう。
『まあ、いざとなればワシでも足止めぐらいは出来よう……多分』
フェリスの目が泳いでいた。当の本人、というより本鳥はフェリスの足で隠れたり、登ったりして遊んでいた。
「アタシも行くし、なんとかなると思うわ……多分」
ちらっと洞窟の外から顔を出したハルも、苦笑いしてそう言った。……ハルが『多分』を、つける、相手……だと。
アメサスタでの怪獣対戦を思い出し、さあっと青ざめた。
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