十日目 正午
『キャルロ』とある意味衝撃の別れをした後、私達は久々にフェリスと話をしていた。
私はフェリスへの連絡手段がある訳では無い。その為、フェリスが自主的に洞窟にやってきた所に、捜索に行こうとしていた私達とたまたま鉢合わせたのだ。
『なかなか厄介なことに巻き込まれたようだの』
クカカカとフェリスが笑い、手を打つようにその翼を羽ばたかせた。羽根が一枚舞って落ちたのを『イーグライフ』の雛が空中でキャッチした。ドヤ顔が眩しい。
「まあ……色々」
正直色々あり過ぎました。怪獣対戦はテレビ越しで見るから楽しいんだと実感した日々でもある。
肩の上でウォンもこくこく頷いている。
『ん、そちらのお嬢さんは?』
フェリスが体を動かさないまま、頭だけくるりと回転させる。梟らしいその動きにハルの目がキラリと光った。確かに面白いと思う。
動物園に行った時に梟の前を陣取って、ちょっと横にズレたり、一回転したりしていたことを唐突に思い出した。そして気が付いたら日が暮れていた。なんの冗談かと思った。
「初めましてかしら。アタシはハル、ハルバーナ・ルビストンよ。宜しくね」
ハルの輝く笑顔と視線がフェリスの翼をロックオンしている。笑顔は普段の五割増。笑顔はプライスレス。もふもふもプライスレス。
『そうか、ハル嬢か。ワシはフェリスと呼ばれるものだ。宜しくの』
「それで今回は……」
『ふむふむ……またアヤツらか……』
「そうなの、実は……」
「なんと! ならば……」
うんうんと頷いている間に二人の会話は進む。会話についていけない私は次第に暇になり、地面にしゃがみ込んだ。うーん、小石がチクチクする。
いつの間にか私のそばに来ていた『ヨーデル』と『イーグライフ』の雛を胡坐をかいた足の間に入れる。ジャストサイズだった。
ウォンも『ヨーデル』の羊毛の中にダイブし、満足そうにしている。
未だに怖がってる『ニィド』の近くに無理に近づくわけにもいかないので、こっそり魔法袋に入っていた『どんぐり』らしき木の実を置いてきた。
暫くすると興味深そうに『ニィド』が近付いて、手で持ち上下に振っていた。どんぐりに耳を当てたり、地面に叩きつけたり、調査しているようだ。
歯でかじったりもしたようだが、硬すぎたらしい。ごろんごろん、は背中の針が邪魔で出来ないからか、尻尾がばたんばたんと痛みを耐えるように動いていた。
……次は殻を割って渡した方がいいだろうか。
『ニィド』がどんぐりをぱしぱし叩くと、どんぐりの頭にある帽子のようなものがポロリと落ちた。それを見た『ニィド』が唖然としている。(え、これ落ちるの……?)という顔だ。そうです、落ちるんです。人形を軽く叩いたら頭が落ちたのを見た時の子供の顔だ。
すぐさま『ニィド』はどんぐりを放り投げ、藁の中に隠れた。そして何故かそこに突撃する『イーグライフ』の雛。
頭にはフェリスの羽根が装備されていた。
『イーグライフ』の雛はどんぐりを拾い、隠れる『ニィド』の前に置く。そして外れた帽子もどきをぽすっと乗せた。
更に上から圧力を掛け、元に戻ったどんぐり。輝くドヤ顔。そしてそれをすかさずカシャリ。
フォルダがまた一つ埋まりそうだ。
隣でウォンが動画へと切り替えようとしている。分かってる。勿論動画も取りますとも。
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