八日目 午前八時
「魔力探知が
「空気中の魔力濃度が異様に高いからでしょうね」
ハルと優矢が異様な空気に眉をしかめてそう言った。魔力濃度が高いとこんな気持ち悪い空気になるのか……。
今初めて知った。魔力探知は今もよく分からない。おそらく魔法の一つなのだろう。
「だからこそ発生源は見つけやすいんじゃねーか。魔力探知するのはその後だ」
「勿論分かってるって」
私はその会話を聞きながら、周囲に神経を尖らせる。確かに嫌な空気にも何となく流れがあるのだ。その流れを逆流すれば発生源に辿りつける、というのは同意だ。
だが、それは途中で妨害がなければの話だ。
分かりにくいように地下から侵入したが、時間が経てば経つほど見つかる危険性は上がる。早く動かなくては行けないだろう。
「……とにかく走るか」
優矢と話し終えたガルドが私の方を見てぼそりと言った。
これは俵担ぎフラグ……!?
***
無音で薄暗い城内を駆け回る
何故人を担いでいるのに音もなく走れるのだろうか。凄いを通り越して恐ろしい。
所々警備の人間が巡回しているが、優矢が即座に背後に回り、首に手刀を落とした。
て、手馴れてらっしゃる……。
ヴァイアスは野生を生きるだけあって隠密の手のプロだ。
というより、この集団にアマチュアなんていなかった。そう、私以外は。(モナとウォンは除く)
同じ地球人の優矢も難なく人外集団に混じってるのだが、異世界に来たら暗殺術を嗜まないといけない決まりでもあるのだろうか。
揺さぶられることによる酔いに耐えていると、隠密を守ってきたはずのガルドが突然ドアを蹴破った。
その衝撃は勿論私にも伝わる。ぐっ、と呻き声を上げるのだけは何とか耐えきったが、ガルドの肩からはずり落ちた。
キュ?! とウォンはパニックになっている。私も似たようなものだ。
何がどうなった。
「……なんだ、これは」
頭上からガルドの
そこには幼い少女がいた。
何処までも黒い一本の角を額に生やした少女。
そして少女の足元の影が広がり、まるで蜘蛛の巣のように部屋全体に張り巡らされ、時折それは蠢いていた。
部屋の中央に佇む少女の目は、見るものをぞっとさせるほど何の感情も感じられなかった。
揺らりと少女の身体から黒い靄のようなものが立ちのぼる。
直感的に理解した。
これが
この街に起こった異様な出来事はここから来ていると。
そして、少女の頬にはその身体から立ち上るものと同じぐらいドス黒い、双頭の竜の刺青が彫られていた。
「……
その紋様を見た瞬間に優矢の纏う気配が変わった。吐き捨てるように言ったその台詞。少し離れた位置にいる私ですら分かる、怒気。
心臓を掴まれたかのような深く、重い威圧感。
それを直接浴びた少女は顔色一つ変えぬまま優矢の方向へ顔をくるんと向け、口を開く。
人のような姿をした異質が笑う。
「あらあら、ゆうしゃさま。……おひさしぶりでございます」
……この日私は垣間見ることになる。
アンフィスエバナという組織の一端を。
そして思わぬ秘密をすらも。
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