ああ

上 おもち

「そいつ」は夜中に現れる。

草木も眠る丑三つ時、

「そいつ」は音もなく背後に回り込み、

人間を食らうのだ・・・。


マルクがそう旅人から聞いたのは、5歳の頃であった。

わずか5歳のマルクには、にわかに信じられないおとぎ話の

ようであった。


「本当にでるの?」


マルクがそうきくと、

旅人は

「ああ、でるとも。必ずや、出るとも。だから夜中に外に出ちゃだめだよ」



とだけ言って、立ち去って行った・・


あれから十年、マルクはスクスクと育っていった。

15歳にもなると、マルクは門限の夜10時を過ぎても家に

帰らない、やんちゃな青年になっていた。


ある夜、いつものように夜中の繁華街をあるいていると、

「そいつ」は突然現れた。

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