薬の問題

さて、ミナミ十席会議の設立から数日が経過した。

「なんで高い薬しか置いていないんだっ!」

「それが、十席会議が、安い薬を冒険者が販売する事を禁止いたしまして……。」

「……むう……十席会議で決めたことならば仕方がない……。」

そう言ってその貴族風の男は引き下がる。そして5ブロックほど離れた大地人の経営する、昔からの薬屋へと向かっていった。

「一体何を考えているのやら…………まあ、高い薬が必要になったのなら、こちらに買いに来れば良いのか。」


そしておよそ数か月後……アキバにおいて。

「待ってください! 自殺なんて早まった真似は止めてください!!」

「止めないでくれ、これ以上アキバで仕事なんて出来ないんだ!」

縄で首つりしようとする男を止めようと、何名かの子供達が慌てて止めていた。


冒険者が<セルデシア>に常駐する事になって、やや打撃を受けている商売が存在した。

主に武器屋や薬屋と言った、『冒険者向けの』大地人の運営する店だ。

これらは初心者冒険者がアイテムを買いそろえる為に存在するのだが、それこそ『初心者向け』の装備しか置いていない。

これは店売りの通常品よりも作成したアイテムの方が強くなるように設定しているからで、その為冒険者が成長するにつれて、こういった『初心者向け』のアイテム販売店は初心者が少なくなるにつれて利用者数も減っていった。


少々高価なアイテムはプレイヤータウンでは手に入らないようになっている為、それこそアキバの薬屋や鍛冶屋はレベルが低く抑えらえれているのだった。


しかし冒険者達が帰らなくなって、彼らの仕事は激減した。

大地人の武具屋には『レベル無視修理』と言う特殊能力が存在し、それこそ修理に関しては100%、装備レベルを無視して修理ができる(これは、高レベルアイテム修理について、いちいち冒険者の鍛冶屋を探す手間を省かせる為。)

大地人の薬屋などには『秘伝の薬』みたいなのが存在するのだが、シスラウ(リプレイ2巻)の事件など『通常の薬が効かない』モンスターの増加などもあって、立場をなくしつつあった。

手作業式の薬品の精製などの手伝いもやっているのだが、流石に冒険者とのレベルが違いすぎた。

そして、店の設備の弱さや、レベルの低さなどの存在について、冒険者全員が頭を抱える事態になったのだ。

昔馴染みになった縁もあったので、無視するわけにもいかず色々と案を出すのだが、解決策としては『大地人向けの安い薬品は売らない。』という消極的な案しか思いつかずに現在に至る。

手作業法による仕事のあっせんなども行いながら、彼らはまた仕事に取り掛かっている。

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