性別とサブ職業の問題
これは<大災害>前の5年ほど前のお話。
「ねえ、貴也。性別はどっちを選んだ方が良いの??」
「好きなの選べよ。どっち選んでも性能変わらないしさ。」
そう言いながら貴也はサポート用のサブキャラを作っていく。
「でも、なんか差があるでしょ?」
「無いよ。外見がちょっと変わるだけだから。」
その言葉にちょっとむっと知った表情で彼女が睨む。
「少しぐらいはあるでしょ?」
「少しでもあると問題があるんだ。」
「???どゆこと?」
「ゲーマーっていう種族の悲しい習性だよ。少しでも有利な戦いをしたい少しでも有利な状況を作りたい。
少しでも性能の良いキャラクターを作りたい………そんな欲望を持った人間がゲーマーの中にはかなりいるんだ。」
「それで?」
「……性別で能力差とか有利不利が決まるようになると色んな団体がうるさいんだ。
外見はともかく性能差が無ければ、ある程度言い訳がきくから、男女基本的に平等ってしているんだ。」
「確かに全世界レベルの物だし、そういうの問題が起きそうよね。」
彼女はそう言って、色々と考え込む。
「だから、どうしても性別で分けなければいけない職業を作る場合、反対の性別にも全く同じ性別を作ることにしている。
会社規約にもそう書いてある。」
「それでも職業ひとつにややこしいわねー。」
「……甘いぞ。例え0.01%でも有利な方を選ぶ。それがゲーマーのサガなんだ。」
笑い飛ばす彼女に対して貴也が真剣な眼差しで見つめる。
「RMTと言うのを規約違反なのにする人間が多いのはそっちの方が有利になるからだし、それこそ自由選択の性別に性能差を加えたら、それこそ一気に性別が偏るぞ。」
そうでなければカタツムリや蛾を連れて自転車で走ったりする人間などいないはずである。
「……昔、サブ職業に吸血鬼が入ったんだが夜有利なせいで、とんでもない事になったんだよな。」
何しろ右も左も吸血鬼。夜の方がモンスターの活動が激しい事もあって、吸血鬼の需要が一気に伸びたのだった。
色々と下方修正が加えられた結果、今ではそれほど人気の無い職業とされている。最もソロ攻撃職であれば、デメリットが無いので、今でも愛用しているプレイヤーもいる。
「装備に関していえば、最上級アイテムは基本、24名以上のレイドでしか手に入らないから。それほど考えなくてもいい。
最上級の幻想級装備の能力は固定だし、個数限定だからな。むしろ、制作級のアイテムを組み合わせていった方が、組み合わせパターンで色々できて面白いぞ。」
「私はそこまで廃人家業をする気はないから、最上級アイテムはいらないわね。組み合わせに関しては……頭いたくなりそう。」
「まあ、俺も24時間やってるような廃人じゃないからな。レイドアイテム狙いは止めておけ……。
時間が幾らあっても足りないぞ。組み合わせに関していえば、目標HP、MP、耐性上昇値、その他特殊効果をどう目標値に近づけていくかだけを考えろ。フレーバーテキストは気にするな。気にしすぎると時間が幾らあっても足りないぞ。」
そんなこんなしている間に彼女のキャラクターが完成する。
「武闘家か……成長方針としてはなにかあるか?」
「これがお勧めとかないの?」
「残念だが、まずどう成長させたいのかを考えないと色々と難しいぞ。
生産職を目指すなら、サポートがある召還術師が有利という説があるが、多くの荷物を持てる戦士職、敵を素早く倒せる武器攻撃職でもどちらを選んでもいい。
戦闘系を目指すなら、<狂戦士>は避けた方が良い。回避力が命のモンクが回避力を下げて攻撃力を上げる<狂戦士>との相性は悪い。
個人的なおすすめは、<拳闘士>だが、移動力重視のキッカーを目指すなら……」
「ねえ、貴也。」
「どうした。」
「そう解説できる、貴方も十分廃人な気がするんだけど。」
「……………それはさておいて、まずは色々やってみて、自分に合ったものをやっていけばいい。」
「さておかれたっ!!」
そうして、たかやのサブキャラも完成する。
「それで、貴也……何であなたのキャラも女性なの??」
じと目で見てくる彼女に対して貴也は言い訳を行う。
「……姫プレイしなければ女性冒険者に襲い掛かってくる奴はそんなにいやしないが、男女カップルパーティーだと時々襲い掛かってくる奴がいるんだ。流石にそれの相手は疲れるからな。」
「ねえ、貴也。そこまでやって性別を決める、あなたも立派な廃人よ。」
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