取りとめのない錯綜した思考
気が付けば三月も半ばを過ぎてしまっていた。
卒業式とやらがあったことすら記憶の彼方で、私は日々を繰り返している。
起床、学校、帰宅、睡眠。
起床、学校、帰宅、睡眠。
春休みの間も部活動はあるので行っているが、部活動をまじめにやっている連中は誰一人いやしない。
それもそのはず、私の居る部活は運動部ではあるが実績は全くない。
毎回地区大会に出ては一回戦負けを繰り返している、そんな部だ。
顧問の先生も全くの専門外で、嫌々やらされているので全く部活動には顔を出さないし、出ても五分くらいですぐに戻ってしまう。
だから私のような、やる気のない学生にはちょうどいい。
冬から春になり、鬱々とした気分がようやく抜けて来た頃。
私は相変わらずあくびをかみ殺していた。
季節の変わり目はどうにもだるさが残ってたまらない。
特に冬から春になるにかけての頃は、体が寒さで縮こまっていたせいか時折の暖かさに慣れていない上に脳は変に動き始めるものだからアンバランスで困る。
春に変質者が多くなるというのもきっとそのせいなんじゃないだろうか。
学校帰りの薄暗い夕方、変質者が出るという話を聞くようになると春だなと思うのだが、それを風物詩と感じるのは何か間違っている気がしてならない。
同様に、深夜にバイクの奏でる爆音が響き渡るとそれもまた春だなと感じる風物詩の一つになっている。ここ最近はバイクの台数もほとんどなく、音は一つ聞こえればいい方なんだけど。
いつものルーティンを終えて、風呂に入って部屋に戻って電気を消し、布団に転がり込む。
真っ暗な部屋の天井を見つめる。幾度となく同じ闇を見る。
私は見失っていた。
何を、というわけではないけど、しいて言うならば人生における生きる意味を。
いろいろあって、私は孤独を友にしている。
部活動を一緒にやっている人は、結局は一緒に部活をやっているだけであって友人というほど親しくはない。
私は残念ながらクラスから浮いている。その理由は話すと長いのだが、とにかく私は人に合わせるのが苦手だったし、ワガママで頑固な所もあって一度へそを曲げると断固としてひねくれてしまう。
そのせいで友達もできないし、できたとしても何かの拍子ですぐ喧嘩別れしてしまう。そのくせに変に繊細な所があって、いつまでも些細な事を気にしてしまう。
楽しいと思える事を次第に失い、日々をただ送るだけになっている。
学業にも打ち込めず、部活動もただただ流すだけの日々。
何か本気で打ち込めることを探してみても、その分野に本気に熱中している人を見るとそこまでやれる気がしない。
一体私は、この先どうしたいのだろう?
誰かに聞いてみてもしっくりと納得いく答えは返ってこない。
いや多分、聞いても無駄なのだ。自分が考えた末での結論ではないし、そんなものを受け入れた所できっと後悔するだけなのだから。
生きる意味とかそんなものを考える時点で春の陽気に頭をやられているのだともう一人の私が言う。
小さい私が言う事ももっともなのだけど、妙に頭が冴えてしまうとそんなことも考えてしまうものだ。あと退屈な授業中に、先生の話を聞かずに戦争とは、とかそういう他所事を考えてしまう。よそ事ばっかりかお前は。
よくよく考えてみれば、そもそも宇宙的な視点から言えば人間の、ひいては地球や星が生まれたのも偶然だし矮小な人間が考える意味など、宇宙的存在からすればそれは無意味に等しいのかもしれない。
だが悲しいかな、私たち人間は意味や意義を見出せないと何のために生きているのかわからなくなって方向性を見失って明後日の方向に向かってしまう。
あるいは私のようにただ惰性のままに流されて島に流刑となる。
そうだ南国に行こう。昔はよくサイパンとかバリとかが候補に挙がっていたけど今は人気がなくさっぱりだという話を聞いた。そうならば今こそそこに行く意味があるのではないだろうか。
人として生まれてしまった事がそもそもの不幸の始まりなのではないかと考えた事もある。半端に知性があるためにむやみに悩み、苦しみ、逃れる為に何かにすがろうとする。
すがるものが見つかればいいけど、見つからない私のような哀れな子羊に神は何をしてくれるんだろうか。そもそも神はいるのでしょうか。いないのかもしれません。
例え神がいたとして、その神が人間を特別視して何かをしてくれる、という考え自体が実に人間特有の傲慢なのではないかと考えずにはいられない。
私はできればヒトでありたくなかった。私はできれば空を飛んで自由に羽ばたく鳥になれればよかった。もしくは猫。
人間の世界はしがらみが多すぎて私のようなものには生きづらいのです。
でもそのしがらみや仕組み、世界があってこそ弱者でもなんとか生きられるようになっていると気づくと、人間はよくよく考えて来たのだなと感心もする。
もし私が完全に自由な無法な世界、すなわち原始の世界に放り出されたら多分すぐに死ぬと思う。だから今の創り出された世界もそれはそれで悪くはないのかもしれない。よくもないのだろうけど。より良い未来を創ろう。
春はむやみに人を考えさせて悩ませる。
きっとこれらの無意味な考えも雲散霧消して翌日には消えることでしょう。
宙ぶらりんの風船のように高く飛んで行って、やがてはしぼんで落ちていく無為な時間を私は潰している。
もしできることなら、私は自分の喉にナイフを突きつけてやりたい。
そうすればきっとこの無為無駄徒労な日々に結論を付けられる。
その結論は人から見れば、なんて自我にまみれてあほらしいと思うのかもしれない。だけどこれ以上の良い結論なんて、他に見いだせるだろうかと現時点の私は思っているわけです。
布団の中で、今日も出来もしない事を考えて、また一日が終わり、朝が始まる。
きっと明日も、同じ日々を繰り返す。
学校に行って、みんなに挨拶して曖昧な笑顔をして、やり過ごすような退屈な時間をかみ殺して。
私には何もない。何かが見つかるような兆しもない。
本当に何もないんだ。
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