遊園地へ

 西の果てに遊園地がある、と聞いた。

 そこを目指している。

 

 

〝すべての雲が風に逆らい 西へ流れる。〟

 

  

 なぜかはわからない。

 そこがほんとうに楽しいところなのか、ぼくはほんとうに楽しい時間を過ごすために行くのかも、わからない。

 

 

〝すべての水が海に逆らって

 そこに行き着く

 遊園地、

 世界は今……〟


  

 何も、わかってはいない。

 そこに、失われた子ども達がいるのかも……

 

 

     *

 

 

 聳え立つ、西の山々は険しい。

 か細い道では、ひとをまどわすけものに遭う。空を舞う禿鷹はいつも腹をすかせている。

 それでも

 幾重の山を越えてゆく

 幾重の山を越えたところは巨大な壁で

 世界がおわる。

 そのたもとに、遊園地はある。

 壁は、遊園地の壁だ……どこまでも続く……


 

     *

 

 

〝夜空に映された、あらゆる火が

 星の運びにあらがい、果てへ…… 遊園地へ。〟

 

 

     *

 

 

 世界は、今、瓶の底にとごってしまっていた。 

 とぐろを巻き、眠りに就いたまま

 世界は、漂っているんだろう

 瓶はおおきな時間を流れ

 世界は、漂っているんだろう

 

 こんな夢を見ながら

 こんな夢を見ながら……



     *

 

 

 ……どれだけ歩いたろうかぼくは。

 

 

〝あらゆる影が大地に逆らい、そこへ向かっている。〟

 

 

 とても気分が沈む。もうすぐ、辿り着こうとしているのに。

 霧が霞めて、遊園地の壁が見える。


 

 ぼくは観覧車に乗って

  あの壁を越えるんだな

 

   すべての子ども達が越えていった

    あの壁を




*2008年5月・ユリイカ「今月の作品」選評欄(辻井喬・選)

※2009年1月・ユリイカ1月号寄稿作とは別の作品

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