八 再び、砂浜 そして……

 男の子は、砂浜で骨を見ている。

 

「あのね、お礼!」

 

 ふり向くと、小さなしろい、す足。女の子は、男の子に手をさしだして見せた。

 

「……?」

 

「貝がらの」

 

「ああ、ぴんくの……」

 

 女の子の手のひらには、なにもにぎられていない。

 

「あなたのこと、つれてきてもいいって」

 

 女の子はそうして、海のほうを指さした。

(海の向こう……それとも、深い海の、底……?)

 

「つばさは?」

 

「そんなもの! あたしたちには初めから、ついてるよ。……うそ」

 

 男の子は、少し苦笑いした。

 女の子は、くったくなく、笑ってみせた。

 

「なかったら、探せばいいんだ。……楽しいよきっと」

 

 

 岬の上では、かわいいビーチサンダルが二つ、まぼろしのように、いつまでも風に吹かれていた。

 

 

(「骨とあの子とビーチサンダル」おわり)

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