幕間 本の化身、青藍は独考する

 さて、『平穏』を失ったこのボンクラを、どうにかして生かさないといけないね。運悪く……いや運良く予報が飛んで来たから、力の使い方とかに関しては覚えて貰えただろ。


 ——さあて、この人間はいつまで保つかな。なるべく長く生きてもらわないといけないけど、よりにもよって『平穏』無しか。『夢』とか『食』とか、そういうのだったら楽だったのになぁ……。


 しかし、いつからだろう。鴉羽が人間が人間たる部品を集め始めたのは。そのために私たちみたいなのを生み出して、ご苦労なこったよ全く。いくつも部品を集めては、その持ち主が死んで部品も死んで、その度に新しい部品を探して……。


 絶対に叶わない夢だってある、ってことは、鴉羽も重々承知の上だと思うんだけどさ。それに、夢ってやつは人間だけの専売特許だ。

 私たちみたいな本の化身や、鴉羽みたいなバケモノが、抱いていいもんじゃあ無いんだよ。


 長いことやって来て、あと一歩のところでいつも届かないんだ。

 もう、諦めるにはいい頃合いだろ。 


 ただ、まぁ……このボンクラ——志田くんが死ぬまでは、その遊びに付き合ってやろうかね。

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