第25話 触手プレイ
蛇の王国内城壁に囲まれ、治療院が立ち並ぶ区域がある。
通称「病院通り」。
その名前が示すように、薬草店や治療院が数多く並び、その多くは『蛇の王国』医療コースの派遣先でもあり研修先でもある。
もともと、魔力含有量は血中濃度を超えることは稀で、おのずと、魔痛症が発生することは少ない。
しかし、蛇の王国の中には一定量の魔痛症の症例はあるため、街でただ一件の専門医として知られている治療院。名を「ガーベイン治療院」へ行くしかなくなる。
そのガーベイン治療院の医院長を務めるガーベイン医院長はホビット族で今年で170歳を数える。
ホビット族は長命で、人間が100歳まで生きるのを基準で考えると、およそ4~5倍の400~500年は生きられると考えられている。
そのガーベイン医院長だがホビット族の女性でかつては、蛇の王国の医療コースで教鞭をとったことも在るほどの人物だったのだが、ある事件を起こして今は講師の職を剥奪され、街の専門医として生計を立てていた。
「本当は行かせたくないのです。あんな変態の所には」
ヴェロニカに案内されて街の「病院通り」を歩く道すがら、ヴェロニカが妙なつぶやきを漏らした。
「どゆこと?」
「かなり変わった趣味の持ち主でして・・・・正直、このヴェロニカは心配でなりません」
ヴェロニカはローブを握りしめた。顔はどんよりと暗い。
「まぁ、行ってみようよ? 名医だっていうし」
凍太がフォローすると、はいとヴェロニカは小さく返事をするのだった。
小さな建屋の中にはいると中には患者が数人いてベンチに腰掛けていた。
カウンターが奥にあり受付を済ませて自分たちも習ってベンチにつくと、カウンターの左隣にある医務室から
時折――――悲鳴のような声が聞こえた。
同時に何人かの患者がびくりと体をちぢめるのが見て取れた。
「—―――んひぃぃ」
まただ。
新しい患者が診察室に入っていくと、少しの間が空いた後に、診察室から声がする。
そのたび、待っている患者たちは身を縮ませるのが、凍太には不思議だった。
「凍太様。申し訳なく思っておりますの。でも、汚されても凍太様の事は、このヴェロニカは大切に思っております・・・!」
隣に座ったヴェロニカは凍太の手をぎゅっと握って熱弁している。
(なんだろうな?汚される?)
この時まだ凍太はあんなことになろうとは、知らなかったのだ。
「次の方」
診察室から前の患者が出て来ると、次は凍太の番だった。
「はぁい」
と返事をして診察室にはいる。後ろにはなぜだかヴェロニカが立っていた。
「一人で大丈夫だよ?」
「いいえ。共に参ります」
譲らないヴェロニカ。その顔は梃子でも動かなそうな顔だ。
中に入ると個室に一人の小さな姿が見える。ガーベイン治療院の医院長。ミレーユ・ガーベイン――――その人だった。
「あら。ずいぶんとかわいい患者さん」
にっこりと笑う。転生前によく見た光景だった—―――小児科などの先生が見せるようなやさしい笑顔が凍太に向けられ、次いで後ろに居たヴェロニカを見た時にガーベイン医院長の顔が曇った。
「で? あなたまでこんなところに来てるってことは症状が相当ひどいのかしら?」
「いいえ。ガーベイン先生が見られますので・・・・念のために」
ヴェロニカが言い淀む。
「—――――まぁ。いいわ。さて・・・まず、症状はどんなのが出るの?」
「魔術を使おうとすると指先が「ちくちく」するんです」
「そう。後ろを向いて服をまくり上げてくれるかな?」
お決まりのセリフが流れて凍太は言われた通り、背中をガーベインに見せるように座って服をまくり上げた。
「じゃあ、さわるわよー」
ぴとりと、手が当てられて触診される。しばらく触った後に、今度は魔術の使用をして見せるように言われたので凍太は魔力を練り、炎の玉を手に出現させようと集中し
「――――っ」
指先に痛みが走って構成が霧散した。
「ふうん。まぁ—―――わかったわ」
ガーベインは構成を読みとり、何かを考えるように、一度机に向きなおって紙に何かを書き込む。と
「次は奥にあるベットに服を脱いで寝転がってちょうだいね」
と指示をだした。
服を脱いで全裸でベットに寝転がる。
周りはカーテンで仕切られ、凍太一人がベットに寝ている状態でヴェロニカはベットのそばで待機中だった。
「凍太様・・・・」
時折、カーテン越しに、ヴェロニカの心配そうな声が聞こえるのを耳にして
「大丈夫だよ」
と声を返した。
やがて、カーテンを割って、ガーベインが入って来る。
手には大きな鉢を持っている。見れば何かの植物のようでうねうねと葉—―――というか触手が動いているのが見て取れた。
「今からこの魔食植物で溜まり過ぎた魔力を抜くね。おしりをコッチ向けてくれるかな」
どうやってやるんだろうと思っていると—―――ヒンヤリとした感触がおしりの穴に感じられた。
「—―――!」
「力まないで。軟膏を塗ってるから冷たいだろうけど、塗らないと痛いわよ?」
言われて、ヴェロニカの言っていた言葉が反芻される。そういう事か と思ってももう遅かった。
恐らくあの魔食植物というものをおしりの穴から入れられるのだと確信する。あの手に持っていた鉢植えがそうだったのだろうと考えている間に、おしりの穴ににゅるりと何かが入ってきた感触に
「んひぃ—―――」
と思わず凍太は声を上げていた。
おしりを抑えられ、穴には閉じられないように器具がはめ込まれた状態で、魔食植物が鉢植えから触手を伸ばして凍太の肛門に侵入する。食魔植物の触手はアスパラガスの先っぽを太くしたようなモノで色は緑色。それが鉢植えから4本ほど凍太の体に伸び、一本はおしりへ、一本は股間へと伸びていた。
(これは――――勘弁してくれぇぇ)
歯を食いしばって耐える。魔力が身体から抜けていくのは少し心地よかったが――――腸をまさぐられる感覚はおぞましかった。
いくら頑張って耐えても、口からはよだれが垂れて、悲鳴に似た声が漏れる。こんな行為がもう5分ほど続けられていた。
(んふー。いいわね。久しぶりの少年のこんなおいしい光景が見られるなんて!)
ガーベインは暴れるおしりを強引に押さえつけながら、7歳児のもだえる姿を嬉しそうに見つめている。
(ほっそい体に可愛い顔・・・・。がんばって耐える少年・・・たまんない!)
苦しさに耐える凍太。反対に悦に入るガーベイン。両者の姿は対比的だった。
やがて――――ちゅぽん――――と音を立てて触手が引き抜かれたころには凍太はぐったりとして動けなくなっていた。
「はぁい。終わり。今日一日安静にしてね」
遠くで聞こえる、ガーベインの声を聴きながらはぁはぁと息をつく。だいぶ魔力を抜かれたのか身体がすさまじくだるい。だが、一刻も早くこんなところにはいたくないという気持ちもあって、凍太は衣服を急いで身に着けると多いそぎで、治療室を抜け出した。
「凍太様!」
制止するヴェロニカを通りすぎて一目散に診療室を出て行く凍太。
ヴェロニカも急いで後を追った。
診療室をでて、近くの出店で凍太は串焼きと蜂蜜酒を煽りながらおしりをもじもじさせた。
隣にはヴェロニカがいてブルストを食べている。
「まだ、おしりが変だ」
顔を真っ赤にしながら、羞恥心に耐える凍太。ヴェロニカは何も言うことが出来ず、ただ
「申し訳ありません」
と繰り返すばかりだった。
「お尻を犯されるなんて思ってもみなかった」
憤慨しながら蜂蜜酒を煽る凍太。よっぽど我慢が出来なかったのだろう。
「おしりを犯された」のだから。
(うう・・・・まだなんかはいってる気がする・・・)
まさか、自分が触手プレイの餌食になるなんて思ってもいなかった。
いくら、魔痛症の為だとはいえ、荒療治過ぎるだろ!と叫びたかったが、恥ずかしさが勝ってしまって言えない。
「でも、かなり楽になった感じもする…」
実際に試しで手に炎を作り出してみたが、顕現させる際の痛みはほとんどなくなっていたのには驚いた。
「あれでも、王国で唯一の魔痛症の専門医ですから」
ヴェロニカはあの変態趣味さえなければ・・・・と呟いていた。
「あの先生、身体を触るしぐさがいやらしかったし、背中を触るときに触らなくてもいい所まで触っていたからね・・・」
「やはりですか・・・・ちなみにどこを触られたので?」
「わき腹と乳首。一瞬だったけどね」
触られたことよりも、この歳でおしりにぶっといのを入れられた経験の方が重大なのだろう。さして触られたことに関しては気にしていなかった。
「戻りましょう。部屋に戻ってお風呂に入って隅々まで洗いませんと」
「そうだね。まだ気持ち悪いや」
提案したヴェロニカの顔はどこか決意に燃えていた。
「なんで一緒に入るのさ!」
「いいからお任せください!このヴェロニカが汚された所をきれいにします」
風呂場の脱衣所の扉を挟んで、凍太とヴェロニカの攻防は続いていた。
事の発端は、凍太が風呂に入ろうと、脱衣所に入った時にヴェロニカまで服を脱ぎ始めたことが始まりだった。
「自分で出来るから、入ってこないでよ!」
「洗い残しが在ってはいけません。私が洗います」
扉が強引に押し開かれる。次第に力負けし始めるのは体の小さい凍太だった。
(くそ。押し負ける・・・!)
やがて扉を抑えきれなくなった凍太は、後ろに跳ぶような形で後退した。
「観念なさってください」
手にブラシと薬草から作った洗浄用のクリームをもってにっこりと笑うヴェロニカのすがたは狂気が混じっていて、ものすごく恐ろしい。本人は良かれとおもってやってくれているのだろうが、凍太にとっては迷惑だった。
(目がマジだ・・・・逆らったらヤバそうだ)
仁王立ちするヴェロニカに射すくめられて、身動きが取れない。どころか腰が抜けた状態の凍太。
雪花国でも小さいころは紗枝と母親に無理やり、洗われていたのを思い出した。
最近はやっとそれからも解放されたと思ったのに、こんどは監視者の上級補佐官に変わっただけなんて――――
風呂ぐらいゆっくり入らせてほしい。と言う凍太の願いは今の状態のヴェロニカには聞き入れてもらえそうになかった。
「では、参りますよ」
「うん・・・」
湯船でいったんあったまった後に魔石で浴室全体をあっためて寒くないようにしてから、ヴェロニカさんが背中をブラシで洗ってくれる。
豚の毛で出来たブラシに洗浄用の薬草をたっぷり塗ってこしこしと隅々までこすり始めた。
「・・・・つぎはおしりです。こちらにおしりをお出しになってください」
「本当にやるの?」
「腸の中を洗いたいところですが今回は加減しているのです」
「うう・・・」
「さあ早く」
と自分の膝をぺちぺちと叩くヴェロニカ。どうやら腿の上に腹ばいに成れと言う事らしい。
「お早く」
「恥ずかしい・・・」
「何を恥ずかしがっているのです。お早く。さぁ!」
「わかったよ・・・」
仕方ない。とヴェロニカの膝に腹ばいになって右手側におしりを突き出した格好になると
「では・・・・」
ヴェロニカはクリームを右手にとって指先に塗り付けると、中指を穴に押し当てて、中に入れた。
「――――いぎぃ」
指が入った瞬間、変な声がでて、風呂場内に反響する。
「我慢です。汚されたところをきれいにしなくては」
ヴェロニカは淡々と中指で腸の内部を洗っていく。指が動くたびに
「んひぃ!」
「はぁん・・!!」
と少し苦しそうな凍太の声が口から洩れていた。
やがて――――
「終わりました」
終了を告げるヴェロニカの声。凍太は腿のうえでぐったりとなりながら、本日二回目になる辱めを耐えきった。のだが、それもつかの間、こんどはヴェロニカの手が股間で動き始めた。
流石にこれには凍太も
「いやぁぁあぁ!そこは、いやぁぁぁぁ!」
と大声を上げて講義する。――――がヴェロニカの手の動きは止まらない。どころか
「こら。暴れないでください。洗いにくい」
と叱責される有様だった。
「自分でやるもん!!ヴェロニカさんの変態!!離してよぉぉぉ!」
「お黙りなさい!こことて汚されているかもしれないのです!きれいにしなくていかがしますか!」
じたばた暴れるが手足が上下に動くだけで、あまり効果はない。
なぜだかこの時のヴェロニカの膂力は半端なものではなかった。
結局、この後全身をくまなく洗われた凍太は、ヴェロニカに畏怖を覚え、同時に
『ヴェロニカショタコン説』を確信した。
「まったくひどい目にあった。なんで後ろに加えて前まで侵される必要があるんだ・・・・!」
次の朝、ランニングを終えた凍太は風呂に漬かりながら不満を漏らしていた。
夜はまだ明けきっていなかった。ヴェロニカは寝ていて、久しぶりにヴェロニカの監視の目から逃れることが出来て気持ちがよかった。しかし、いまだに、おしりを犯された感触が気持ち悪かった。
とはいえ、今日からまた、魔痛症の予防の為の特別訓練が午前中に組まれ、午後には座学のカリキュラムがあるのは分かっていた。
(午前の魔術講習に出れないのは痛いな・・・)
いくら病気が関係しているとはいえ、早く魔痛症をなおして復帰しなければ、授業の差はつく一方だ。
実際は差など誤差なのだが、いまの凍太には大事に思えて仕方ない。
それどころかおいて行かれるような気さえしているのが実際の所ではある。
ヴェロニカには
「遅れている?なんのためのカリキュラムだとお考えですか?通常の講義など比べるべくもありませんわ」
と笑われてしまった。
(そうは思えないんだよな・・・。みんなが進んでいるように見えるのは気のせいなのかな)
頭の中にネガティブな考えが浮かぶのを湯船に顔を付けて振り払った。
「さて、昨日の続きです。よろしいか?」
カーシャ講師は今日も妥協のない姿勢で言った。
「はい。よろしくお願いします」
凍太も元気よく挨拶し、フルプレートに向きなおった。
「はじめ!」
科目は昨日と同じ空風系の魔術の発現。
昨日と同じように立ち、手で手刀を作って斜めに振り下ろすと同時に
「風よ!」
と発音する。一度目は失敗。二度目は、フルプレートが ガアン!と音を立てて揺れたのが確認できた。
「出来た」
痛みはさしてなかった。多少ちくりとはしたが、一度目より二度目の方が痛みは少なかったのは確かだった。
「今のを繰り返し行っていきなさい。連発出来る様に」
「はい」
構成を同じように組んで、手を振りおろす。今度は2個の風が当たるようにイメージをして
「風よ!」
と声を出して構成を固める。
ガガアン!と2発の音とフルプレートが前と後ろに揺れた。
「つづけて!3発!強めに!」
カーシャの指示が飛ぶ。
今度は連続で3発を出す。イメージと強さを要求される。威力を増すために魔力を練っていきわたらせる感じを思いながら――――叫んだ。痛みが走る。が、耐えられない痛みではない。我慢をした。構成を最後まで持たせて集中すると、フルプレートが3発音を立てて、後ろに揺れた。
「そこまで!」
カーシャの声が制止を掛けた。
「見事じゃよ。まだ威力は弱いが、まぁ及第点じゃろうて。のう?」
ランドルフが笑いながらカーシャに同意を求める。
「ええ。連発できればよいと思っていましたので・・・まさか3連発できるとは思っていませんでした。これからが楽しみです」
カーシャの目がきらりと光った気がする。それを見た凍太は”しまった”とでも言った感じで、閉口した。
(あっちゃ・・・またやっちゃった・・・紗枝さんで分かっていたはずなのに!俺のバカ!)
昔にあったことがフラッシュバックする。ああいう手合いには実力より下を見せておくのがセオリーであると分かっていたはずが、乗せられるままにやってしまった。
しかし、もう遅い。カーシャの目は凍太を『面白い』とみていた。ランドルフも自分の考えが間違っていなかったことに満足しているような素振りだった。
唯一、ヴェロニカは『私は何も見ていません』とでも言いたげに、そっぽを向くのが恨めしい。
だが、凍太は、ただで終わるのは癪だったので
「あはっ たまたまうまく出来てよかったなぁ」
などと大きめにと呟いてみたのだが、効果はなさそうだった。
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