死を望む神様
テクラウス
第1話 堕天
気づけば俺は宇宙に居た。
宇宙に居る前、神として世界の管理をしていた。
だがここに居るって事は飛ばされたのだろうか。記憶が曖昧になっている。
そして俺の真下には俺が管理していたであろう世界が存在していた。
世界を管理していたはずなのに何故こうなった。
神としての能力は残っている。その一つに死ぬと復活すると言う能力【完全復元】があり、完全に死ぬ事は出来ない。
俺が完全に死ぬ時っていうのは、俺と同等の存在が居て初めて完全に死ぬことが出来る。しかし自分で自分を殺すことは出来ない。
完全に死ぬ事は出来ないが、死の苦痛はちゃんとあるから最悪だ。
そしてもう一つ、経験をすることでその事象に対しての能力を得る【事象把握】の能力。
しかしそんな経験をする機会はなく無意味なものとなっていたのだが……
<一回目の死は窒息死>
気づいたら宇宙に居たわけだが勿論呼吸が出来るわけもない、そして息が出来ずに死んで少ししてから生き返った。【呼吸不要】を得る。
<二回目の死は凍死>
宇宙の極度の低温に対応できずに死んだ。【温度無効】を得る。
<三回目の死は被曝死>
太陽からの放射線に耐え切れずに死んだ。【被曝無効】【核魔法】を得る。
<四回目の死は飢餓>
食べる物が無く栄養を取れずに死んだ。食べ物を食べずに生きて行けるようになった。【飢餓無効】を得る。
<五回目の死は衝突死>
隕石に当たってミンチになって死んだ。衝突物に抵抗できるように体が強くなった。【筋力増加】【体力増加】を得る。
<六回目の死は圧死>
衝突では死ななかったが、その後に後ろからも隕石が来て挟まれて死んだ。
【圧死無効】を得る。
<七回目の死は焼死>
結局宇宙を漂っていた俺は、管理していた世界の引力に捕まりそのまま大気圏に突入し燃え尽きた。【火炎無効】を得る。
<八回目の死は刺殺>
箱庭世界に墜落した後住む場所を求めて街を目指したが、俺の姿を見るなり恐れた表情をした衛兵に槍で刺されて死んだ。【刺突無効】を得る。
<九回目の死は撲殺>
更に追撃するかの如く復活したところを殴られて死んだ。【撲殺無効】を得る。
<十回目の死は毒死>
人を殺すわけにもいかず必死の思いで街から逃げだした俺は、山に入るも肩に落ちてきた毒蜘蛛に首を噛まれて毒で死んだ。【毒無効】を得る。
<十一回目の死は感電死>
復活したところに運悪く雷獣が通りかかり、人間絶対殺すべしと雷を放たれて死んだ。【雷無効】【雷魔法】を得る。
<十二回目の死は溶解死>
山を当てもなく歩いていると、いきなり草むらからスライムに飛び掛かられ捕食されて
<十三回目の死は氷結死>
復活したのち山の頂上に向かうと神殿があり、その前には氷像が佇んでいた。
その奥に進もうとしたら氷像が動き出して、氷の魔法を放たれ氷漬けにされて死んだ。【氷結無効】【氷魔法】を得る。
<十四回目の死は切断死>
この山で住処を探すのは駄目だと判断し降りようとしたが、山に住処を作り潜伏していた盗賊に曲刀で体を切り裂かれて死んだ。【斬撃無効】を得る。
<十五回目の死は水死>
陸地が駄目なら水の中と、呼吸不要を活用して逃げ込んで深くまで潜ったところ、
水龍の住処に入ってしまったようで水魔法で無残にも殺された。【水無効】【水魔法】を得る。
<十六回目の死は呪死>
水龍に殺されたあと陸に打ち上げられた俺だったが、そこでアンデットに呪いをかけられもがき苦しみぬいて死んだ。【呪術無効】【黒魔法】を得る。
十六回死んだあと、【事象把握】能力により殆どの攻撃を無効化出来るようになり、魔法もある程度使えるようになった俺は無人島と思われる場所に逃げ込んだ。
――――俺はあと何回あの痛みを経験するのだろう。生き返っては死ぬ。
完全に死ぬことは許されず苦痛はそのままに。
神様として世界を管理していたのに、住人や魔物にも殺されて……
死に能力だった【事象把握】が役立ったのは唯一の救いか。
本当になんでこうなった。
可能性としてはここの住人に堕とされたと考えるべきか。
神として魔法の耐性や対抗策を身に付けておくべきだったか。
能力の改変とか最初に済ませて以降手を付けて無かったので仕方ない。
はぁ……。
この世界に名前は無い。ただ【箱庭】と俺は呼んでいた。
人の間では多分名前があるだろうが俺は気にしていない。
俺の管理が不味かったのだろうか、と言っても管理というのは名ばかりで、ただ見ているだけに過ぎなかったのだが。
世界の管理なんてこんなものだろうと、自分の中で決めつけていたのが悪かったのか。
まあ長年管理するのにも疲れを感じてきていたし、死ぬまでの休暇としてこの世界でのんびり生きるのもありなのかもな。
そして俺は無人島の探索にでかけた。
一応の攻撃手段として水、雷、黒魔法は死ぬことで取れたし、使い方も問題は無い。
核魔法は破壊力の制御が面倒なのと、強すぎて世界に影響を与えてしまうので使うことは無いだろう。
大体の耐性は取れているから、適当に寝転がってても大丈夫なのだが……安息の場所が欲しい。
どうせ死ぬことは出来ないんだからのんびりと暮らせたら俺はそれでいい。いつか俺を完全に殺せる存在が来てくれるなら是非とも歓迎したい。
その為にはこの島を探索して住みよい場所を作るしかないか。取りあえず今は探索しようか。
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