第2話 銀スライム
島の中心をなんとなく目指して歩き少し経った頃、銀色をしたスライムと出会った。
ぽよ~ん
スライムは普通に見る分には可愛いんだが、溶解≪とか≫されて死んでるからな。
ぽよ~んと揺れているスライムを見つめてどうするか考える。
なんだか可愛く見えてきた。
いやいや駄目だ駄目だ。一回、
溶解無効を得ているんだから怖くないんじゃ?
耐性の確認もできるし丁度良いかもな。と言うわけでスライムに近づいてみるか。
ぽよ~ん
前はいきなり飛び掛かられたから対応できなかったんだよな……
今は取りつかれても平気だし撫でてみるか。
俺はスライムの頭?と思われる表面を撫でてみる。
「うわ!なんだこれ!ヒヤッとしてて凄く気持ち良い」
スライムは俺の手を
逆にそれがマッサージされてるみたいでとても気持ち良い。
ずっと触っていたい位だ。
「おお…凄く良いかもこれ、一家に一匹欲しいなー。そうだ、お前俺と一緒に来ないか?」
スライムはただぽよ~んと揺れている。気のせいだろうか表面の揺れが小さくなっている。
これは
何か釣れるものでもあればいいんだが、生憎と食事の必要ないんだよな俺。
まあいい。取りつかれてるんだからこのままいけばその内仲間になってくれると信じておこう。
ぽよ~ん
うむ。なんだか愛着が湧いてきたしとても可愛い。可愛いものは正義だな!
折角だし名前でも付けようか……
「よし、お前の名前は【エストレア】愛称はエレアだな」
と、エストレアが光を発しその眩しさに俺は目を瞑ってしまう。
光が収まった後、俺の目の前に銀の髪色をした女性が裸で立っていた。
「は?」
目の前の光景に一瞬思考が止まる。
「は?…いやいやいやいや、ちょっと待て誰だお前!俺のエレアはどこ行った!?」
「私がそのエレアなんですが……」
「はぁ!?何言ってんの?あのプルプルボディが女性になんてなるわけないだろ!」
「いやあの、すみません」
裸の女性に詰め寄った俺。あれ?これって確実に駄目な図じゃね?
「あー、まあなんだ。とにかく何か着るか隠すかしてくれ。流石にその恰好は色々と不味い」
「え?でも私スライムですし……」
「わかったわかった、お前はスライムだ。大事な部分が無いとは言え今の姿は人なんだから俺の服でも着ててくれ」
そういって着ていたジャケットを渡す。
ちなみに俺の服だが、神だった時に着ていた服を着ている。
え?燃えたりしたんじゃないかって?それはあれだ、神様の衣服だからな。丈夫で再生機能も付いてて、更には消失しても直ぐに俺の体に戻ってくるという呪いみたいなおまけつきの一品だ。
Yシャツにジャケットそしてジーンズと言うシンプルな服装なのだが、この世界の文明レベルはそこまで高くないので正直俺は浮いている。だから衛兵に殺されたのかもな。十中八九関係ないだろうが。
まあ神様と言ってもそんな煌々とした仰々しい服とかは着たりしないのだ。シンプルイズベスト!
「裸にジャケットだけとか余計悪くなった気がするけど、裸よりましだよな……て、ボタン止めろよボタン!」
「ボタン?」
「ボタン知らないのか?あ、この世界にはボタンはまだ無かったか。しゃあない、留めるから動くなよ」
子供の世話をしている親の気持ちってこんな感じなのだろうかと思いながらボタンを留めてやる。
「で?改めて聞くがお前は一体何だ?」
「何だと言われましても、私はスライムのエストレアですとしか答えられないです」
「…………」
何言ってんだこいつ。いや待て、俺が管理していた時はこんな事は起きなかったぞ?
名前を付けて人になるとかそんなことが起きたら魔物が全部人になるし、ペットも魚も全部人になると言う大惨事になるぞ!?
なんでこうなった?原因は俺が名前を付けたからこうなったんだよな。神様だったからそんな力が付いたか?
名前付けたことなかったもんな。これが初めてというわけだ。とするなら…
「なんだかわからないがわかった。お前はエレアで良いんだな?」
「はい。エレアです」
「まず一つ聞きたいんだがなんで言葉が喋れるんだ?」
一番最初に気になったことを聞いてみる。
「確かに。なんで喋れるんでしょう?」
「いや、俺が知るわけねぇだろ!」
謎が深まってしまった。
「じゃあもう一つ質問だ。性別は女で良いのか?」
「スライムは性別がなく雌雄同体でもないのですが、女と思ってもらって良いと思います。今がそうですし」
「スライムって性別ないのか。てか雌雄同体なんて難しい言葉よく知ってんな」
「そう言えばなんで知ってるんでしょう?」
「わからねぇのかよ!」
また謎が以下略…
「ふうむ。わからないことだらけだがなんとなくわかった気がする」
何故喋れるのかの仮説を立ててみた。
「まずお前がその姿になった理由は俺が名前を付けたから…だと思う。
そしてお前が喋れる理由は、俺が名前を付けたことによって俺と魂での繋がりが出来てしまい知識や言語の共有が行われた…。
これはまぁ不完全だったからボタンとかがわからなかったんだろう。知識はその内に馴染んだりして定着するだろ。ここまではいいか?」
「はい」
「それで聞きたい事があるんだが、元は魔物だろ?襲わないのか?」
「襲わないですよ。溶解≪とか≫そうと思っても何故か
「攻撃とかは大体無効化出来るからな」
「それで
「ああ。死にまくってあらかたの耐性が付いた」
「死にまくったって、そんなに何回も死ねるわけないじゃないですか」
「神様だったからな」
「神様ですか?」
「元だけどな」
「元って事は今は違うんですか?」
「まあそうだよ」
「そうなんですね」
「そうなんですねってそれだけ?疑わないの?」
「はい」
「そうだよな、普通疑うよな……て、え?疑わないんだ」
「はい。なんとなくそう感じるので」
なんというか凄く冷静だ。スライムだから冷たくて冷静なのかもしれないな。うん。
「そうか」
努めて冷静に返す。
「で、元々スライムだったわけだがこれからどうする?」
「名前を付けておいてそれを聞きますか?」
「愚問だったな。じゃあ一緒に行くかエレア」
「はい」
こうしてエレアと言うスライムが仲間になった。元々ずっと一人だったから少し嬉しい。
しかしこいつは何を食べるんだ?
「なぁエレア。スライムって何食べて生活してるんだ?」
「そうですね、基本雑食で
「なら俺の魔力だけで大丈夫だな。俺は何も食べなくても生きれるし、てか死ねないし」
「死ねないんですか?」
「ああっと、正確には16回死んでるな。死んでは生き返ってを繰り返してる」
「不死身なんですか?」
「不死身とは違うかな、俺を殺しきれる存在が居ないんだよ」
「そうなんですか」
「そうなんだ。てかエレアは元の姿に戻れないのか?」
「戻れますけど会話が出来なくなりますよ?」
「あー、それは不便だな。じゃあ一部を変化とかは?」
「それは普通に出来ます」
腕をスライム状に変化させてぷるぷるさせるエレア
「おー!これで俺の枕は確保できるな!」
「枕ですか…」
「人になるなんて思ってなかったしスライムのあの感触が良いから無理やりにでも連れて行こうかと思ってた」
「人にしてもらって言うのも何ですが、無理やりは酷くないですか?」
「俺の魔力を渡すんだから等価交換だ」
「確かに」
「素直でよろしい。さて、一応の目標だった寝床はどうしようかな。エレアはこの島の事どこまで知ってる?」
「スライムとして生まれたのが最近なのであまりわかりませんが、人は居なかったと思います。あ、この近くに洞窟がありますね。
寝床にするならそこが良いかと」
「じゃあ道案内頼んでいいか?」
「わかりました」
そして俺はエレアの案内で洞窟へと向かった。
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