アルト公の想う者23


「はむ」


 花火大会の後。


 アパートでだらだら。


 昼食を食べていると、


「どうも」


 エリスが訪ねてきた。


「おやま」


 もくもくと昼餉を食べる。


 食事が終わった後。


 照ノはベランダに出て、タバコを吸った。


 アリスとアルトは、ゴロゴロ。


 エリスはベランダ傍の畳に座って、照ノに話しかける。


「照ノ。避暑しない?」


「それは聞きやした」


「じゃあ行こう」


「いつから?」


「今から」


「準備は?」


「出来てる」


「此方が出来ていやせんよ」


「大丈夫。必要な物は使用人が買い足すから」


「はぁ」


 そんなわけで、真駒の家に一週間ほど泊まる事に為った。




 ――緊急会議。




「急ですね」


 クリスの意見もご尤も。


「私は行けないわ」


 シスターマリアが拒否した。


 教会の運営があるらしい。


「では私も……」


 クリスが断ろうとして、


「クリスちゃんは行く事」


 マリアに命じられた。


「…………何故?」


「折角の機会ですもの。一夏のアバンチュールを楽しんでらっしゃい」


「ここの魔導災害は?」


「代わりを頼むわ。威力使徒だってクリスちゃん以外に居るのよ?」


「それはそうですけど」


「僕も良いのかな?」


 ジルが挙手する。


「当然」


 エリスは頷いた。


「アリスもー」


「ウェルカム」


「えーと……」


 キラキラした目で、アルトが照ノを見つめた。


「アルト公も行きやしょう」


「いい……の……?」


「構わん案件でやしょ」


「やしょ」


 エリスも頷く。


「じゃあ私と照ノとクリスとアリスとジルとアルトで」


「照ノちゃんハーレムね」


「嬉しいでやすな」


「さりげに私も入れないでください!」


「第一夫人」


「氏ね!」


 仮想聖釘。


 ヒョイヒョイ。


「避暑三昧」と書かれた扇子をパンと広げる。


「ツンデリズム過激派でやすな」


「この際原理主義だと思うの」


「この……!」


「シスターマリアにも聖釘を投げやっせ」


 からかったのは、照ノと等価だ。


「じゃあ」


 話は終わり。


 とならなかった。


 ピロリン。


 ラインにコメントが。


「わらわもじゃな」


 そんなメッセージ。


「……………………」


 照ノが沈黙する。


 扇子を閉じて懐へ。


 キセルのタバコに火を点ける。


 紫煙を吸って、吐く。


「何故此奴が」


 少し懸念もする。


 ――本当に少しか?


 そこは勘案に値するだろう。


 厄介な影が忍び寄っている。


 そんな実感。


 だが照ノの器量を超えている。


「こいつはヤバい」


 それほど、ラインのコメントは、凄まじかった。


 南無阿弥陀仏。


 西方浄土へレッツらゴー。


 ある種の究極の避暑かもしれなかった。


 照ノには無理な話でも。


 概燃。


 その破滅性は、誰より自分がよく知っている。


「なんだかなぁ」


 さすがに暁の星事件並みのテロは、そうそう起こらないし、起こったらたまらないが、メッセージの主が積極的に関わって……、


「何も無し」


 と考える方が度し難い。


 その辺のマイナスの信頼は、人徳だった。


 ここで、


「哀しい事に」


 と枕詞が付く。

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