エレクトロキネシス17


「以前筋を見て貰いましてね。火鬼を参考に藤原の四鬼を」


「あー……」


 それで照ノは思い出す。


「藤原遠野…………神童遠野か」


「懐かしい呼ばれ方です」


「今何歳だ?」


「六十三」


 過去に出会ったことがある。


 そして吸血鬼に血を吸われ、若返ったのだろう。


 知識と貫禄と魔術は六十歳。


 見た目は二十歳程度だ。


「で、そっちの式神が……」


「金鬼、風鬼、水鬼……ですな」


 隠形鬼は姿を見せていない。


 さもあらんが。


「さて、どうします?」


「叩きのめしやす」


「さすがの天常様にあられます」


 苦笑された。


「っ」


 パチッ、と音がする。


「ラハトケレブ」


 一瞬で、情報を事象に変換された。


 二次変換だ。


 行なったのはエリス。


 彼女の身体を起点に、雷撃が発生し、


「――――――――」


 金鬼が、それを防ぐ。


「なるほど。賢しいでやすな」


 フーッと煙を吐く。


 金剋木。


 陰陽五行の基礎だ。


「ま、勝てるとは思っていませんが」


「本家はどうお扱いで?」


「後は死ぬだけの厄介者……ですな」


「なるほど。清算はしたわけで」


「ええ。どうせ老化して死ぬなら、既に家督も継がせた身。吸血鬼に……というより魔導災害になるのも一興か……と」


「お気持ちは分かりやすが、手加減はしやせんよ?」


「あれから数十年。先生を相手に奮闘できるなら、御喝采で」


「では参りやしょう」


「ええ」


 瞬間、風と水が、奔流した。


 風鬼と水鬼だ。


 まともに受けたら、押し流されるのみ。


 ことはフィジカル。


 大質量だ。


「アリス」


「だねー」


 神勁で触れる。


 瞬く間に無力化される……風と水。


「九天応元雷声普化天尊」


 雲なき闇より霹靂が落ちる。


 それも自然災害級。


「が――っ!」


 苦悶が響いた。


 だが思惑しない。


「ふむ」


 照ノは大質量の氷に触れる。


「灼」


 ――たったの一文字。


 それだけで氷の大塊を、水蒸気へと変質せしめた。


 ドイツもコイツもイタリアも……化け物ばかりだ。


「さて」


 霧散した氷は、無視して、三人が遠野に近寄ろうとする。


「――――――――」


 声なき声。


 隠密の風。


 隠形鬼による奇襲。


 相手は照ノ。


 先と同じだ。


 まず真っ先に危険視されたのだろう。


 理屈は分かるが、それにしても…………と申すべきところではあったろう。


 まず理屈が通用しない。


 短刀片手に、襲う隠形鬼の……武器が消えた。


「――――?」


 困惑。


 確かに鬼は驚いていた。


 事は単純で、熱結界を張っていただけだ。


 触れた事象を燃やしつくす対質量防御の魔術。


 短刀程度なら、触れるより前に塵へと還す。


「――――っ」


 間合いを取ろうと引く隠形鬼に、


「待った!」


 エリスが待ったをかけた。


 雷光が閃く。


 神経系を凌辱し、一時的なショック状態へ、隠形鬼を変質せしめる。


 所謂電気ショックだ。


 どちらかならば落雷に近いが。


 轟音が、この場、全員の耳を叩く。


 そして隠形鬼は消えた。


 気配が……ではなく……存在が。


「……………………」


 一番厄介な相手が消えたのだが、


「どうにもこうにも」


 が照ノの意見。


「何をしやした?」


「電気ショック」


 それで鬼が消えるなら、まだまだ世界は広いというわけだ


 南無八幡大菩薩。

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