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職質を受けても平然と自分のペースを貫くことのできる横山。
空気を読むことができないのか、鋼のような神経を持っているのか、それともその両方なのか。
昭久は今さらながら横山と自分との今後の付き合い方について思いを巡らせ、そして頭を抱えた。
「新田くん、僕……やっぱりこのまま帰った方がいいかな?」
頭を抱える昭久を見て、深浦が気づかうように言った。
「――――――いや、いい。深浦が大丈夫なら、このまま横山の計画に乗ってやろうじゃないか」
「え、でも」
「なんか面白そうじゃね? こんな経験、めったにできることじゃないし。あ、でも深浦が嫌なら止めるけど」
「ぼ、僕、嫌じゃないよ! 新田くんがいいなら、僕もこのままで大丈夫」
「じゃあ決まりだな。さて、そうなるとこれからどこに行こうか……深浦のこともあるし、あんまり人の多いところは避けた方がいいか」
昭久が深浦の方へ目を向けた。
どこから見ても女の子。だが、いつどこで男だとバレるかもわからない。
「それなんだけど、実は横山くんからこれを預かってて……」
そう言うと、深浦が小ぶりなショルダーバッグの中から折りたたまれたレポート用紙を取り出した。
「横山くんが、今日はこの通りに行動してくれって」
深浦から渡された紙に昭久が目を通す。そこには今日のデートプランが細かく記入されていて、昭久は最後まで見終えると眉間にシワを寄せた。
「何だこれ。ここまでするなら俺じゃなくてもいいんじゃないのか?」
「――――え!?」
「なに?」
「え、や、僕はできれば新田くんがいい……んだけど」
「…………っ」
深浦が肩を竦めて遠慮がちに昭久のことを覗い見た。深浦と目が合った昭久が一瞬言葉を詰まらせる。
ちょっと上目使いなそんな仕草、これがもし深浦でなかったら、そしていつもの昭久なら、頭の中でデート後どうやって朝までコースに持ち込むかをスーパーコンピューター並に計算しているところだ。
「………………惜しい」
「新田くん?」
「――いや、なんでもない。それよりこの予定表ではこれから映画を見に行くことになってるけど」
「うん。これチケット、横山くんから。デートのモニターに協力してくれる代わりに、今日の費用は全部横山くんが出すって」
「えらい気合の入りようだな……あれ? 上映時間、もうすぐだ。深浦、急ごう」
「あ、うん……」
昭久が早く行こうと促すが、なかなか深浦は動こうとしない。
「深浦?」
「ごめん、スカートとかブーツとか初めてだから、何だか動きにくくて」
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