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深浦は前回のミーティングの時に横山にスカウトされた。
理由は毎週火曜日に学食で見かけるのと、彼女がいなさそうだから。
深浦には悪いが、昭久も彼女がいなさそうというところは横山と同じ意見だ。
おそらく百六十あるかないかの男にしては微妙に小柄な身長に華奢な体形、袖口から覗く手首は折れそうなほど細い。そして、まるで顔を隠すかのように伸び放題の髪は、お約束のようにあちこちに寝癖がついている。
さらには、そんなのどこから探してきたんだと思わずツッコミを入れたくなる野暮ったいデザインの眼鏡。それのせいで今ひとつ表情が読めない。
深浦は単におとなしい性格なだけなのだが、その眼鏡のせいで何を考えているのか得体が知れないといった印象を周りに与えていた。
チビで地味で野暮ったい眼鏡。
そんなモテない要素満載の深浦を、お仲間募集中の横山が見逃すはずがなく、学食でひとりでいる所を見事横山に捕まってしまったのだ。
横山は深浦のことを自分と同じモテない君だと思っているが、深浦に関しては「モテなさそう」ではなくて「女の子から男として見られてなさそう」だなというのが昭久が彼に持つ感想だった。
「――――だから、俺たちが一人寂しい思いをしているのは、相手に理想を求めすぎるのがよくないと思うんだ」
(そうそう、実際に付き合ってみたらイメージと違うとか言われるんだよなあ)
昭久はあくびを噛み殺しながら、熱弁をふるう横山を横目で見た。
「外見だけではなくて、やっぱり中身重視! 深浦くんもそう思わないか?」
反応の薄い昭久は無視することにしたのか、横山が深浦へ向けて言った。
まさか自分に来るとは思っていなかったのだろう、深浦の動きが一瞬止まる。
「――――えっ?」
「深浦くん、聞いてた?」
「あ、うん。僕も……そう思い、ます」
(ああ、これは聞いていなかったな)
こいつも横山なんかによく付き合うよなあ、と昭久が隣の席へ視線を向けた。
背中を丸めて小柄な体をさらに小さくして座る深浦。その姿は、まるでハムスターかなにかのようだ。
視線を感じたのか、深浦が顔を上げた。昭久と深浦の目が合う。
(眼鏡かけていつも下向いてるから気づかなかったけど、深浦って結構可愛い顔してるな)
交流(と呼べるほどのものでもないが)をもってひと月半、昭久は初めて深浦の顔を正面から見た。
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