星屑のセッション

矢嶋 暁

第1話 夢の始まり

―東京都23区某所―

 区内でも比較的栄えているこの街には昼と夜で二つの表情を見せる。

時代の最先端を感じさせるオフィス、通りのノスタルジーを感じさせる店の数々が静かな昼を感じさせる....いわゆる『現実』の一面だ。

もう一面は帰路につくサラリーマンやOL、ストリートパフォーマンスの連中で溢れる騒がしい夜....ここでは『享楽と夢』の一面とでも言っておこうか。

 昼と夜で正反対の一面を見せるこの街の夜には、今日も享楽と夢に満ち溢れている。

酔いつぶれた大人に騒ぐ若者、通りの横で歌うストリートミュージシャンにそれを見張る警官....という夢に破れた連中と、夢を追いかける連中が夜のこの街に一緒に住んでいるのだ。

 もちろんアタシ、『星野尾 珠理』(セノオ ジュリ)もこの街の夜の住人である....夢を追いかける方の。

どうもアタシ達のような人間は、変にマジメで堅苦しい、頭でっかちな大人にはどうも理解されないらしい。

こう話してるうちにまた一人、ストリートの連中が警官にしょっぴかれた。恐らく通行の邪魔とでも判断されたのだろう。

....今日のストリートライブはやめておこう。そう思った時だった。

 小さなうめき声が暗い路地裏から聞こえた。酔っ払いにしては少しトーンの高い、そんな声だった。

少し気になったので路地裏を見ると地面に這いつくばる小さな影が目に入った。

12、3歳くらいの少年、少し小柄で体の線はかなり細い。 服はところどころ破れ、その間から傷だらけの青白い不健康な肌が見える。

ぼさぼさの紺にも近い色の髪の間から見える、死にそうな見た目から想像できない程に輝く黄色い目が、生きようとする想いを必死に訴えかけてるようだった。

 人助けなんてガラじゃないけど、死にそうな人間を見捨てる程、外道ではない。アタシはこの少年を警察に連れていこう、と考えた....が止めた。

連れていくのはいいものの、今度はアタシが補導対象になるからだ。

「....立てるか?」と言い、その子供に手を差し伸べた。

少年はこくん、と静かに頷き、アタシの手を取りふらふらと立ち上がった。


 これがアタシとコイツの最初の出会い、それがアタシの『星野尾 珠理』のスタートラインだった。

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星屑のセッション 矢嶋 暁 @dreamwing

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