第4話 折衷案
幼女に頼まれて、ゲームでは行けなかった山のほうに花を獲りにいくことに
「よし、これだけいれば大丈夫だろう。
首尾よくいったら、街には入らず街の入り口で待ってるんだぞ」
「お兄様、さすがですわ」
「ある意味すごいぷる……」
「頼まれたほうはたまったもんじゃないのじゃセラな」
「ラミラミ」
「効率的にゃん!」
「ウガー」
「でもぉ、お花見つかりそうだねぇ!」
俺の前には、短期間で編成した、山に花を探しに行って戻ってくる部隊が集結していた。
山に行かねば、花は探せない。
だが、山は危険である。
そもそもにして、どんな魔物が生息しているか、その魔物がどんな特殊能力を備えているか。
また、モンスター娘たちとのターン制バトルが有効か? など未知数のことが多すぎる。
ターン制バトルがなければ、戦闘初心者である俺などは、たとえ剣を持っていたところで山犬にすらかみ殺されるだろう。
仲間が増えたとはいえ、俺を守り切れるのかは不安が残る。
そこで出たのが折衷案である。
とりあえず、そこらで狩りをしまくって、泥子軍団20体を軸に、ブルセラ子軍団や、適当に捕まえたラミ子集団などを集めて捜索隊を結成したのである。
「自分たちの役割はわかってるな?」
「「「ウガー!」」」
「お前らじゃわからん。そうだな、指揮はブルセラ子4が執れ」
「わかったのじゃセラ。
いまいち使い捨て感もあって、腑に落ちないのじゃセラが任された限りは、できるだけ仲間の人数を減らさずに、花を見つけて帰ってくるのじゃセラ」
「みんな、ブルセラ子4のいうことをきくんだぞ」
「ウガー」
「了解ラミよ」
「のじゃセラー!」
「じゃあ気を付けて行ってこい!
暗くなるまでに戻れなそうだったら諦めて帰ってきてもいい。
その時はその時で別の方法を考える」
「あくまで自分で行く気はないのじゃセラね」
そう指摘するのはブルセラ子3(幼女っぽい18以上で牧場行き内定)だ。
「なら今からでも、捜索隊に加えてやろうか?
ブルセラ子3?」
「すまんかったのじゃセラ。
もう偉そうなこと言わないのじゃセラ」
「みんな納得してくれた、これがベストの選択なんだ。
あれだけの数がいれば、全滅はもとより、欠員が出る事もないだろう。
前衛を守備力で高い泥子で固めて、回復役にはブルセラ子たちがいるからな。
ラミ子たちは吸血で自己回復できるからな。
これほど安定している軍団もないだろう」
ゲームとは異なる世界であるために発生した問題、俺の知らない地域は危険がいっぱい問題であるが、これもゲームとは微妙に仕様が異なる仕組みによって解決できそうである。
それすなわち、ゲームではパーティメンバーは4人までで、それ以上のモンスターを引き連れて歩くことはできないし、パーティを分けることもできない。
が、こちらの世界で、仲間にできるモンスターに上限はないし、別行動ができるということは、グリスラ子たちに買い物に行かせた時に実証済みだ。
あとは、モンスター幼女同士の戦いがどうなるのか、モンスター幼女だけで魔物に対してちゃんと戦えるのか? 等の試してみないといけない点は残っているが、失敗したところで、軍団を集めるのに使った時間と、本来であれば経験値玉なり、素材なりにできていたモンスターたちが、失われるだけである。
要は時間の無駄だったとなって終わるだけでデメリットはない。
そう、デメリットはない。
現に、ネルルも、
「お姉ちゃんたちがぁ、お花見つけて帰ってきてくれるんだねぇ」
と期待のまなざしで見送っているし。
「我らが仲間ブルセラ子4が指揮している限り、安心なのじゃセラ」
と先ほど脅しをかけたブルセラ子3も納得のご様子だ。
「下手に素材にしたり経験値にしたりせずに、上手く運用すれば、一儲けできそうなアイデアが生まれそうですわね」
とフェアリ子も、なんとなく商売っ気を出している。
まあ、そこまでやるつもりはないが。
「じゃあ、お兄ちゃん、これからわたしたちはどうするプルか?」
と、グリスラ子が聞いてくる。
「そうだな、いったん街に戻るか。
ネルルも家に送ってやろう。
それから、俺はブルセラ子とラミ子と泥子……59? ぐらいだっけ?」
「ウガー!」
「こいつらと最初の村に飛んで、牧場に預けてくる。
そのあとで、マミーを探してそれから戻ってくることにする。
だから、またお前たちは自由行動だな」
「わかりましたわ」
といってフェアリ子が手を出してくる。
「なんだ?」
「自由だけでは、何も得られません。
先立つものを」
「ああ、小遣いか。
わかった、街に着いたら渡してやる。
帰りの戦闘も頼んだぞ。頑張った奴にはボーナスだ」
「頑張るプル!」
「わかりましたわ」
「にゃん!」
ということで、パーティをグリスラ子、フェアリ子、タマに入れ替えて街に戻ることになった。
結局ネルルは、モンスター幼女には襲われることがないようであるし――俺達を優先して狙ってくる――、護衛であれば、ブルセラ子3と、ラミ子と泥子59で十分なのであった。
さらにいえば、ネルルはブルセラ子と仲良くなっている。
街に戻ればお別れだから、今のうちに少しでも話をしておく時間をやろうという心使いなのである。
そうして、俺たちはモンスターを倒しながら、街にたどり着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます