第10話 お使い前夜

 宿屋のツインルーム(ベッドがふたつ)で四人で寝ますが、幼女が二人とちっこい妖精が一匹なので十分です




「じゃあ、わたくしは兄様のベッドで寝ますから!」


「こっちのフェアリ子ちゃんの掛布団用意したぷるけど……」


「掛布団? はあ? そんな布きれ。夕方もらった端切れじゃないの。

 いいのよ。そんなに寒くないしお兄様に温めていただくんですから」


「寝てる最中に寝返りでもうって潰してしまっても責任はもたんぞ?」


「そんなやわな体してません!

 これでもれっきとしたモンスターなんだから!」


 確かに。

 フェアリ子は、モンスターでありコボル子なんかに比べると体力的の劣るとはいえ、俺の剣での攻撃を2撃までは耐えるというそこそこの耐久力を持っている。

 加えて。

 グリスラ子はともかくとして、コボル子は寝相が悪い。どちらかというと危ないのはあっちのベッドだったりする。グリスラ子も良く我慢できているな……というかあいつが一番朝早いのはコボル子の寝相のせいかも知れないとか思いつつ。


 グリスラ子への態度はともかくとして、フェアリ子が一緒に寝ること自体に意義はそれほどない。


「わかった。じゃあ寝ることにしようか。

 灯りを消してくれ」


 と就寝することとなった。




「コボー、コボー」

「すやーぷる、すやーぷる」


 モンスターらしい寝息を立てながら、あっちの二匹は寝てしまったようだ。

 幼女だけあって(実際には18歳以上なのです)、それに今日は移動に次ぐ移動で、連戦に次ぐ連戦で疲れもあったのだろう。

 ものの数分で寝てしまったようだ。


 そんな中。


「お兄様、まだ起きてらっしゃいますか?」


「ああ……、どうした寝付けないのか?

 それとも腹が減ったとか?

 ドアを開けてやろうか?

 運が良ければ食堂に行ってはちみつが舐められるかもしれないぞ」


「そんなはしたないこといたしませんわ!」


「声が大きい。あいつら起きちゃうだろ」


「これは失礼しました」


「はしたないかどうかは別にしてお前が舐めるくらいなら文句も言われないどころか、ばれないと思うぞ。それにどうせかけ放題って話だったし。

 それとも、窓を少しあけておいてやろうか?

 花の蜜が舐めたいんだったら、ちょっと出て行って吸って帰って来てもいいぞ。

 起こしてくれたらまた窓は閉めてやるし」


「だから、お腹が空いたんじゃありませんの」


「だったらなんだっていうんだ?」


「今日が何の日かわかりませんの?」


「今日? 特になにも思い当らないが?」


「まあ! そんな冷たいことを!

 まあ男の人ってそういうものなのかもしれませんわね。

 ですが、今日はわたくしとお兄様が出会った記念すべき日じゃありませんか?

 いうなれば……」


 と、そこでフェアリ子が言葉を切った。

 暗くてわからないが――加えて小さくてよくわからない――、顔に手を当てているところを見ると頬を赤らめているのかもしれない。

 フェアリ子のことだからそういう仕草や態度をとっているだけで頬は赤くなっていないことも考えられるが。


「いうなれば、今日は初夜ですわよ?」


「初夜?」


「わたくしたちの初めての夜ではありませんか?

 それをそのまま寝てしまうなって。

 勿体ないを通り越して寂しさに、寂しくて震えるレベルですわ」


「わかった。おやすみ」


 俺はフェアリ子を無視して寝ることにした。

 が、そうは問屋が卸してくれない。


「ねえ、お兄様ったら……」


 と、フェアリ子が俺の口元にちゅっちゅちゅっちゅし始めた。

 キスなのだろうが、体格差がありすぎて、興奮どころか、唇の柔らかさどころかほとんど感触も感じない。


 とはいえ。

 レアリティなしのコボル子やグリスラ子相手にこういうことはできなかった。

 試しに、


「ちょっと、ごめん」


 とフェアリ子の足を掴んで逆さにぶらさげて、胸に相当する部分――一応は相当とかじゃなくちゃんと胸なのだが、貧乳に加えて身長20センチ、さらにいえばかなりのスレンダーのため――、指先に収まりかねないぐらいの範囲――を突っついてみた。


「あんっ! お兄様! いきなりそんな……」


 身もだえするフェアリ子。

 何度か突いてみる。


「あん! いや! だめ!」


 と同時に、逆さにつりさげているので、フェアリ子のワンピース風の服がずり落ちて、脱げてしまう。

 ちゃんとパンツは履いているようだが、それ以外は生まれたままの姿になる。


「きゃっ!」


 と両手で慌てて胸を隠す。

 だが俺は見逃さなかった。服が脱げそうになったとき、そのままでは腕にひっかかって脱げなかったのをフェアリ子が自らあえて、脱げるように腕を抜いたことを。


「は、恥ずかしい……です……」


「すまん。あとひとつだけ試させてくれ」


「えっ? なにを……、あっ、そんなところまで……」


 俺は一指し指でフェアリ子のお尻を撫で、つまむようにして親指を下腹部に添えた。


「お兄様の……お指……。あたたかい……」


 恍惚の表情を浮かべるフェアリ子だが、俺の思惑は別のところにあった。

 

 やはり。

 レアリティゼロのグリスラ子達にはできなかった大事なところへのボディタッチ。

 相手が小さいので確実とはいえないが、レアリティ1持ちのフェアリ子にはできるようである。


 とはいえ。

 所詮そこまでである。

 レアリティ1相手には軽いボディタッチまでしか許されていないのであろうし、フェアリ子に対してそれ以上できるかも試す気にならない。

 変に欲求を溜めないためには最低でもレアリティ3以上のモンスターを相手にしないとならないのだ。

 じゃないと変に欲求を溜めることになってしまう。


「わたくし……、お兄様になら全て捧げますわ……。

 自由にしてくださいまし……」


 そっとフェアリ子をベッドに降ろしてやると、フェアリ子は俺の枕元に寝そべり、耳元へと囁いてきた。

 どないせーっちゅーんじゃ? というが正直な感想である。

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