第5話 お宿
宿屋に着きました
グリスラ子11とグリスラ子15は一応はモンスターで衣類は身にまとっておらず、見た目は裸の幼女(ただし年齢は18歳を超えている)で、裸じゃ何かとまずいので緑色の粘液が大事なところを隠しているという、まあ普通に考えたら二度見、三度見するぐらいの格好なのだが、この世界の人間は寛容だ。
元々がエロゲだから細かいことは気にしないという設定が引き継がれているのだろう。
グリスラ子11もグリスラ子15も普通の人間としてカウントされる。
つまりは宿代が少し上乗せされて、食事などがふるまわれる。グリーンスライムだからといって、おかしなものを食べるわけじゃなく、俺と、つまりは人間と同じ食事だ。ハンバーグ定食みたいなやつだ。
「お、う、うまいぷるぜ! 兄貴!!」
グリスラ子11が感動してぷるぷるしている。
「お前ら普段何食べてるんだ?」
「いやまあ、いろいろぷる。いろいろ。
だけど、ひとつだけ言えるのはこんな旨いものは初めて食ったぷるってことだ。
兄貴に拾ってもらってよかったぷるぜ!」
まあ、拾ったわけじゃないが、拾ったといえば拾ったみたいなものか。
とにかく元気なグリスラ子11は、
「お礼はいいから、食えよ。冷めちまうぞ」
と促すと「安心してください、食べてますよ」みたいな返しはせずに普通に無言でハンバーグ定食をがっついた。
食っている間だけは静かだ。他はメラメラと瞳に意味もなく炎をともしているか、なにか叫んでいる。
ふと、グリスラ子15に目をやると……。
「…………」
無言でハンバーグを眺めていた。
手にはフォークすら持っていない。
「どうした? 食べないのか?」
「…………」
「黙ってちゃわからんだろ?」
「もぐ、う、うまいぷるぜ! うおぉぉぉぉ! むしゃむしゃ、肉汁が……!」
「お前は黙って食べてろ。グリスラ子11。
どうしたんだ? グリスラ子15?」
「お肉……ぷる」
「ああ、肉だ」
「生きてた……ぷる……」
言葉少ななグリスラ子15を促して――もちろん俺自身の食事は続けながらだが、あと時折叫ぶグリスラ子11をなだめながらだが――、説明を求めると、要はかわいそうで食べられないとかそういう話で、食べなきゃ余計にもったいないなどという人間の都合に寄りかかった解釈で説明して、なんとか納得させたと思ったら、
「こんな……、ぜいたくな食事……。
牧場の仲間たちからの……、嫉みや妬み……」
また何か言い始めたと思ったら、俺と一緒に宿に泊まって食事をすることで、仲間から悪く思われていじめられるのではないか? 等と気に病んでいるようで、
「ああ、まあグリスラ子15を毎日宿に泊めるわけじゃない。
今日はたまたまそうだったってことだ。
もちろんグリスラ子11もな。
だから、みんなも気にしないさ。それに牧場組のナンバードグリスラ子たちにはグリスラ子無印がちゃんと説明してくれているはずだ。
お前ら二人を恨んだり
などと説得しつつ、フォークを振り回すグリスラ子11をどやかしつつようやく食事を終えた。
そして朝である。
俺は、悶々とした気分で、固い決意を胸に。牧場に向かっていた。
いらねえ。こいつらいらねえ。さっさと経験値に変えるか、金に変えるか。
2~3日分の宿代と最小限の回復アイテム代だけ残したあとは経験値玉にしてしまおう。
残すのはグリスラ子無印だけでいい。
さっさと新しい仲間を、もっと強力な仲間を。欲する。
いや、強くなくてもいいから中盤以降のモンスターを仲間にせねば。
というのも……。
宿には風呂がないようで――ゲームではイベントの発生する温泉宿はあったのでそこまでいけば風呂はあると思われる――、とりあえずお湯で体を拭いて誤魔化すスタイルであった。
自分の体を拭きつつ、幼女二人(に見えるがどちらも18歳以上)にも体を拭くことを要求した。
あわよくば、兄貴の体を拭いてやるぜ! みたいなことをグリスラ子11が言い出すかと思ったがそんなことはなく。
それでも目の保養である。するりと粘液をほどいたグリスラ子11とグリスラ子15は、俺の目の前で体を拭き始めた。
グリスラ子11は論外だ。恥ずかしげも風情のかけらもなく、ただ単に幼女が寒風摩擦をしているようなある意味健康的な絵柄。ちょっとばかしはあれがあれするが、そこまであれはあれしなかった。(ボッキ的な意味で)
翻って、グリスラ子15。
こちらは優等生だ。食事の時は面倒な奴だったが、そして長時間一緒にいるのは正直しんどいが。実際、しゃべりかけるとネガティブなことばかり言ってうっとうしいので、極力話しかけないようにしているが。
とにかく、グリスラ子15が体を拭く姿は、情緒があって奥ゆかしく。
俺の視線を気にしてこちらをちらちらと気にしながらも。そして大事なところは極力隠しながらも。どうしても隠し切れずにチラ見えしてしまう。それというのも無駄に丹念に身体をフキフキしているからのようだ。
どうせ、拭き漏れがあって、体臭を放って誰かに嫌な顔をさせてしまったらどうしよう? とかしょうもないことを考えているのだろう。
まあ、中身は面倒くさいがこの際そこは気にせずともよい。
あれがあれになってきて、つまりは欲情した。
「グリスラ子15。
そんなに丁寧に身体を拭きたいんだったら、自分ひとりじゃ手が届かなないところもあるだろう?
俺が拭いてやるからタオルを貸しな」
「お、お兄さまが……。
グリスラ子15の体を拭いてくださるのですぷるか?」
手でほとんど膨らみのない胸を隠して振り向きながら何やら口を開こう――どうせまたネガティブ発言が飛び出すのだろう――とするのを視線で制してグリスラ子15からタオルを受け取った。
「じゃあまずは背中からだな。
後ろを向いてくれ」
いきなり(自主規制)とかはさすがにあれであるし、俺は流れを大事にするタイプでもあるために、グリスラ子15の小さな背中にタオルを当てる。
いや、正確には当てようとした……。
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